「懲役●年の刑に処する」・・・「えん罪」を科してしまった人たちは、どのような罪に問われるのか

大分県で万引き犯に間違われた小学生が事情聴取されるという事件が起きました。

記事によると、小学生が破れた商品の袋をコンビニの店長に届けたところ、店長が小学生が万引き犯人だと誤解し、警察に届け出てしまい、その後、警察が事情聴取したということです。しかし、真犯人は別にいました。

犯人ではないのに、犯人と間違えられ、裁判を受け刑に服した後に、無実が明らかになることを「えん罪」と言います。

この事件では、店長は小学生が万引き犯人だと誤解していました。しかし、仮に、小学生が犯人ではないと知りながら、警察に届け出ると、虚偽告訴罪となります。

虚偽告訴罪は、3月以上10年以下の懲役になる重い犯罪です。店長はわざと警察に届け出たわけではないので、虚偽告訴罪とはなりませんが、小学生が犯人だと誤解した点に過失があれば、民法上の不法行為となり、損害賠償責任を負います。

今回はえん罪を起こしてしまった場合、どのような責任を負う事になるのかについて解説していきます。

牢獄

●意図的にえん罪にした場合

仮に、捜査機関によって、証拠がねつ造され、えん罪になった場合に、警察や裁判所に責任はあるのでしょうか。

証拠をねつ造した警察官は、虚偽告訴罪となります。また、証拠隠滅罪(2年以下の懲役または20万円以下の罰金)にもなります。さらには、ねつ造した証拠に基づき捜査報告書を作成すると、虚偽公文書作成罪(1年以上10年以下の懲役)になります。

また、えん罪であることを知りながら、逮捕すれば、逮捕監禁罪(3月以上7年以下の懲役)になります。さらに、民法上の不法行為責任も負います。

裁判所が、証拠がねつ造されたと知りながら、有罪判決をすれば、虚偽公文書作成罪になりますし、さらに、民法上の不法行為責任も負います。

上記の犯罪は、すべて故意犯です。故意犯とは、簡単に言えば、わざと犯罪を犯すことです。以上のようにかなり重い罪が問われることになります。

 

●間違ってえん罪にしてしまった場合

捜査機関や裁判所が間違ってえん罪を作り出したときはどうなるでしょうか。上記の故意犯は成立しません。また、民法上の不法行為責任も原則として負いません。

警察官も裁判官も公務員です。公務員が公務中のミス(過失と言います)によって損害を生じさせても、公務員個人に不法行為責任が生じないことになっているからです。代わりに、公務員が所属する地方自治体や国が不法行為責任を負います。地自体や国の不法行為責任を国家賠償責任と言います。

このように公務員がミスしてえん罪を作り出しても、通常のミスであれば、公務員個人は個人責任を負わないことには批判もあります。ただし、ミスの程度が大きく故意に近いような場合(重過失と言います)は、公務員個人も不法行為責任を負います。

その他、公務員が懲戒処分を受けることもあり得ますが、私の知る限り、えん罪によって公務員が懲戒処分を受けたという事例を知りません。

えん罪の被害者は、何年も裁判を受け、さらには、死刑の恐怖に怯えながら拘置所で生活します。そのえん罪を引き起こした公務員の責任が弱すぎるという批判があります。

民間人であれば、民法上の不法行為責任を負うのに、公務員であれば、重過失以外には負いません。せめて、公務員も不法行為責任を負うようにすれば、えん罪発生の抑止力になると思います。

 

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

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星 正秀 ほしまさひで

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