お店のBGMにCDを流したら「使用料を払え!?」…こんなことあるの?

念願叶って自分のカフェを開店。自分好みのインテリアに食器、お気に入りの音楽をかけて素敵なお店にしよう、と意気込んでいた矢先、先輩経営者からこんな忠告が。

「勝手にCDを流したら著作権侵害になるよ。」

レストランや喫茶店、雑貨屋、服屋、デパート……店舗に入ればその店の雰囲気にあったBGMが流れています。これから自分で店を経営しようとする人は、店内BGMは店の雰囲気にあったお気に入りの曲を流したいと考えることでしょう。

しかし、市販されているCDを無断で店内BGMとして使用すると、著作権法上違法となる可能性があります。

カフェコーヒー

■CDを流すことも「演奏」

作詞家が作詞をし、作曲家が作曲をし、完成した曲を歌手が歌い、レコード会社がCDを制作する。1枚のCDだけでも、著作権法上の権利が保護されている人はたくさんいます。

作詞家や作曲家は、著作権法上、著作権者としての権利を有しています。また、同様に、歌手は「実演家」として、レコード会社は「レコード製作者」として、著作隣接権という権利を有しています。

これらのうち、店内でBGMを流すときに関係するのは、著作権者が有する「演奏権」です。CDに収録された楽曲を再生することも著作権法上の「演奏」にあたるとされているためです。

つまり、市販されているCDを無断で店内BGMとして利用すると、本来著作権者に属している演奏権を勝手に行使することになり、著作権者の演奏権の侵害にあたる可能性があるのです。

 

■かつては自由に流せた

日本の著作権法は、1970年の制定時から、レコードによる演奏の再生を原則自由としてきました。つまり、店内のBGMとしてCDを流すことに対して著作権者等に許可をとる必要はなかったのです。

しかし、著作権者の利益保護のため、1999年の著作権法改正法よりこのような規定が廃止され、店内BGMとして無断でレコードを使用できなくなりました。したがって、現在では、自分が経営する店でBGMとしてレコードを流すには、必要な手続をとる必要があります。

 

■店内BGMとして曲を流したいときはどうすればよい?

一般的に、著作物(CDに収録された楽曲もこれに該当します)の利用の多様化が進むと、著作権者等にとっては、どこで誰が利用しているか管理するのが困難になり、自分の権利に対する侵害が生じていてもその事実さえ知ることができなくなります。一方で、著作物を利用したいと思う人にとっても、個々の著作権者等と交渉して著作物の利用のための手続をすることは困難です。

そこで、著作権者が一定の団体に自らの著作物を管理させ、著作物利用の管理を委ねるシステムが生まれました。つまり、一定の権利団体が著作物利用の許諾等の窓口となって、使用料の支払いに対して著作物の利用を許諾するとともに、徴収した使用料を本来の著作権者等に配分するというシステムが導入されるようになったのです。

音楽では、その役割を担っているのが社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)です。

JASRACでは、店内でのBGMの使用について、店舗面積によって使用料を定めています。店内でBGMを利用する店舗の経営者は、JASRACに利用の申請をし、1年単位で使用料を支払うこととなります。

このような簡単な手続だけでCDをBGMとして利用することが可能となりますので、これから店舗の営業を始めることを考えている人等は、これらの手続に遺漏のないようにしなければいけません。

なお、CDではなく、店内で有線放送等を流す場合には、経営者が独自にJASRACとの間で契約する必要はありません。また、福祉・医療施設や教育機関でのBGMの利用や、事務所等で従業員のみを対象としてBGMを流す際にも契約が不要とされるケースもあります。

今後お店を開きたい、またはすでにお店を運営しているという方は、著作権について今一度考えてみてください。

 

*著者:弁護士 鈴木翔太(弁護士法人 鈴木総合法律事務所)

鈴木 翔太 すずきしょうた

弁護士法人 鈴木総合法律事務所

東京都渋谷区恵比寿1-8-6 共同ビル4階・7階

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