大砲つくって逮捕!? 「武器等製造法」ってどんな法律?

宝塚市の高校1年生が、なんと「大砲」を作ったとして逮捕されたニュースが話題です。大砲で逮捕?タイホーでタイホ?!えっ…?

記事によると、その少年は武器等製造法違反と銃刀法違反の容疑で逮捕されたとのことです。はてさて…?武器等製造法??聞いたこと……無いぞ?!

「弁護士」という肩書を付け、普段依頼者様から「先生」と呼ばれているのがお恥ずかしい限りです。この機会に武器等製造法について調べましたので、良かったら読んでみてください。

大砲

●武器等製造法の気になる中身

武器等製造法は昭和28年に出来た比較的古い法律です。この法律は、銃などの武器の製造を政府の許可制にして管理することで、公共の安全を確保することを目的としています。この法律では、鉄砲や鉄砲弾、猟銃、空気銃などを政府の許可なく製造した場合、刑事罰を受ける仕組みになっています。

例えば、鉄砲を許可なく製造した者に対しては、3年以上の懲役というかなり重い刑罰が適用されます。皆さんも聞いたことがある犯罪でいえば、この3年以上の懲役というと、強姦罪や傷害致死罪と同じ法定刑なのです。

なお、この少年が製造したとされる銃は空気銃ということですので、武器等製造法の定義では「猟銃等」ということになります。ですので、その場合の法定刑は三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金または併科という内容になります。

 

●報道内容は少し間違っているかも?

ニュースの内容で、「この少年が製造したとされる空気銃が殺傷能力の高いものであったため、武器等製造法の適用となった」という内容が書いてありましたが、この表現は誤りないし勘違いが含まれているように思います。

記事を読む限りこの少年は、殺傷能力のある空気銃1丁を製造、所持し、かつ空気銃より殺傷能力の低い準空気銃2丁を所持するなどした疑いがかけられているということです。少年には、武器等製造法と銃刀法違反の容疑があるわけですが、前者は述べたとおり武器などの製造を罰する法律で、後者は主に銃などの所持を禁止する法律です。

 

●武器等製造法と銃刀法はどう違う?

殺傷能力(威力)の違いで刑罰に差を設けているのは、武器等製造法ではなく、銃刀法の方です。

分かりやすく言うと、銃刀法では、人の生命に危険がある程度の空気銃の場合と、人に傷害を負わせる程度の空気銃(定義上、「準空気銃」とされています)の場合で刑罰に差を設けています。一方、武器等製造法においては、空気銃の威力についての決め事は読み取れませんでした。

ですので、記事が実際に何を伝えたかったかは不明ですが、強いて言うのであれば、「この少年が製造したとされる空気銃が殺傷能力の高いものであったため、銃刀法の適用においても重い刑の適用となった」と表現するのが正しかったのではないかと思います。

もっとも、そんな深い意味合いは無く、ただ単に、「少年が製造したとされる銃が本格的な空気銃であったがために、銃刀法だけではなく武器等製造法も適用した」と言いたかっただけかもしれませんね。

 

*著者:弁護士河野晃(水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)

河野先生
河野 晃 こうのあきら

水田法律事務所

兵庫県姫路市本町68-170大手前第一ビル3階

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