■極めて重罪になる危険
結論からいうと、軽い気持ちで焚き火をした結果、思いもよらない重罪に問われる大きな危険があります。
また、焚き火行為自体も、「相当の注意をしないで、建物その他の燃えるような物の付近で」焚き火をすることは、軽犯罪法1条9号に違反します。
軽犯罪法違反は、罰則も軽く、実際上あまり問題とされることもないので、あまり気にしなくてよいですが、怖いのは、焚き火が失火罪や放火罪に発展するケースです。この点について詳しく紹介します。
■延焼したら大変なことになる
焚き火といっても、いったん炎が制御不能なレベルに達すると、消火は極めて困難です。
一見、空き地で何もなくても、植物に延焼して火が広がり、空き地の周辺のバイクや車、住居・建物にまで火が到達する危険は常にあります。
例えば、焚き火の際の不注意により、周辺のバイクや車に延焼し、付近一帯に「公共の危険」(人の生命身体・財産に危険が及ぶ状況)を生じさせた場合、失火罪が成立します。
また、焚き火をしていた空き地の面積や可燃物の配置、建物等との距離、天候、消火体制・道具の準備の有無といった事情から、周辺への延焼を容易に予想できたといえるような場合には、未必の故意(延焼しても構わないという意思)があったものとして、焼損した対象に応じ、現住建造物放火罪、非現住建造物放火罪、建造物等以外放火罪の責任に問われる危険があります。
現住性建造物を焼損した場合、現住建造物放火罪となり、(人が実際に死んでいなくても)死刑、無期懲役、5年以上の懲役という極めて重い法定刑です。
非現住建造物放火罪は、2年以上の懲役、建造物等以外放火罪でも1年以上、10年以下の懲役です。
この他、実際に死傷者が出れば、殺人、重過失致死、傷害罪などの責任にも問われます。
■小学校時代の教えには理由がある
このように、失火、放火関連の罪は法定刑が相当重くなっています。
これは、まさに、「いったん制御不能なレベルに達すると、消火が困難」という火の性質と、可燃性の木造密集住宅が多い日本の社会事情を考慮したものです。
焚き火や火遊びは、小学生男子であれば、誰しも興味をそそられるものですが、「火遊び禁止」という小学生時代からの学校の教えは、火遊びの危険性と重大な法的責任を踏まえてのものです。
「たかが焚き火」と思わず、不注意により、重大な放火罪に発展することがないよう、気を付けましょう。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)