海外でトラブルに遭ったら「アメリカ大使館に駆け込め」は本当?

海外でトラブルに巻き込まれるというケースは少なくありません。

スリに遭ったり、ぼったくりに遭ったりなどはよくある話で、場合によっては自然災害に巻き込まれる、大きな事件に巻き込まれてしまうなど簡単には済まないケースもあります。

ネット上では、トラブルに巻き込まれたら「アメリカ大使館に駆け込め」と言われているようで、日本大使館よりも何かと役に立つという見解も少なからずあるようです。

それでは実際問題、海外でトラブルに遭った際はアメリカ大使館と日本大使館どちらに行くべきなのでしょうか?

アメリカ■ケースバイケース

結論としては、一律には判断できないとしかいえません。

まず、日本やアメリカの大使館は、いずれも外交関係に関するウィーン条約の規定による在外公館として、母国の管轄権に服し、所在国の管轄が及びません。

具体的な例で簡単にいうと、例えば、北京の韓国大使館に北朝鮮住民が駈け込んでしまうと、中国の公安が韓国大使館の敷地内に入り込んで、無理やり北朝鮮住民を連れだすことはできない、という形で適用されます。

少し前には指名手配されていたウィキリークス創設者のアサンジ容疑者が、在ロンドンエクアドル大使館に逃げ込んだ事件もありました。

ここからわかるように、例えば、海外で警察に不当逮捕されそうなケースでは、日本やアメリカの大使館に限らず、現地にある大使館に駆け込んで、いったん身を寄せることは有効な防御となります。

このとき、日本語と英語が通じ、事情を話しやすいという意味で、日本やアメリカ大使館があればそこに駆け込むことにメリットはあります。

ただ、危険が切迫しており、遠くの大使館まで行く余裕がないケースでは、とにかく近くの大使館に入るべきかもしれません。

これに対し、犯罪被害に遭ったケースでは、まずは現地警察に連絡し、その後、日本大使館に届出をすべきでしょう。

アメリカ大使館が日本人の犯罪被害に何らかの対応をしてくれることは基本的にあまり期待できません。

 

■アメリカ大使館の方が良いケースはあるが…

お役所でも企業でも、場所が異なればある程度対応の違いが生じるのはやむを得ません、

日本人が拘束された時、国に助ける「義務」はあるのか」の記事にあるとおり、そもそも国民を助ける義務の明確な法的根拠が曖昧なのはたしかですが、どの国の大使館も税金で運営され、所在国の在留自国民保護を任務としている以上、自国民の保護が優先されるのは明らかです。

もちろん、他国民であっても、例えば、アメリカ大使館が日本国民を保護することは違法ではないので、人道的見地から、対応してくれることは考えられます。

結果的に、日本大使館よりも対応が丁寧だったということはあるかもしれませんが、基本的には、現地在留日本国民保護を任務とする日本大使館に助けを求めるのが原則でしょう。

極端な例で、紛争地帯に近く、武装勢力が襲撃して人質になる危険が高い状況などでは、近隣国に駐留しているアメリカ軍は、まずアメリカ大使館の防御・奪還を優先させるのに対し、日本の自衛隊を現地日本大使館に派遣して防御させることは極めて困難です(憲法と現行法上不可能かもしれません)。

そういう意味で、武装勢力の戦闘が迫っているケースなどでは、アメリカ軍の保護が見込めるアメリカ大使館の方が、事実上、生存確率は高いかもしれません。

以上みてきたように、極端な例も含め、ケースバイケースとしかいいようがありませんが、現地では、自分の身は自分で守りつつ、基本的には、トラブルに遭ったら日本大使館にまずは相談するのが正しい対応だと思います。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)

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星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

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