最近の子ども(というと年をとった気になりますが…)はPCやスマホを大人顔負けに使いこなすことができますよね。
それは便利なこともある反面、トラブルのもとにもなっているようです。たとえば、ネットショッピングがそのひとつ。近頃では子どもが勝手にネットで買い物をして親が支払いを求められてしまうというトラブルが多くなっています。
なかには、子どもが勝手に注文した商品をキャンセルすることができず全額請求されるという事例もあるようです。
では、子どもが親に内緒でネットショッピングをした場合、親はキャンセルすることができず代金を支払わなくてはいけないのでしょうか。ネットショッピングの場合の特質も含めて解説していきたいと思います。
●おこづかいの範囲を超えたら取り消せる
民法上、原則として未成年者は契約をする能力がありません。
そのため、親の同意・追認がある場合や、おこづかいなどの親が子どもに自由に使っていいと言ったお金を使う場合、更に「親は同意しています」「ぼくは20歳です」などとうそをついた場合等を除いて、未成年者がした契約は取り消すことができます。
ネットショッピングも売買契約に変わりはありませんので、子どもがおこづかいの範囲を超えて勝手に商品を頼んでしまった場合、契約を取り消すことができます。なお、おこづかいの範囲(「目的を定めて処分を許した財産」)に入るかどうかは金額の多寡だけで決まるものではないので注意が必要です。
●キャンセル不可・返品不可と書いてあるけれど…
子どもが勝手にした契約を取り消すことができるという結論は、画面上に「キャンセル不可・返品不可」と書いてあっても変わりません(買主が大人の場合であれば一定の例外を除いてキャンセル・返品はできないという有効な契約内容になります)。
逆にいうと、ネットショッピングの売り主・販売会社側は、「キャンセル不可・返品不可」と書いても、買主が子どもの場合にはキャンセル・返品をされるリスクがあるということです。
そのため、実際には、注文画面等のわかりやすい場所に「未成年者の場合は親権者の同意が必要です」旨の規約を掲示し、「利用規約を確認・同意した上で申し込む」の隣にチェックボックスを置くなどの工夫がされていると思います。
●実際に契約を取り消した後は
契約を取り消した場合には契約がなかったことになるので、商品の受取りや代金の支払いが終わっているときは、商品を売主に返し(商品の一部しかない場合は一部でよいです)、売主は代金を返さなければなりません。
なお、契約自体は取り消すことができても、子どもはお店に損をさせたり手間をかけさせたりしたのだから、詐欺罪に当たるとか損害賠償をしなければならないのではないかと思う方もいるかもしれません。
しかし、商品が特殊なものであるとか、子どもの行為がよほど悪質な場合とかでない限り、詐欺罪や不法行為には当たらないといえます。
以上のように、基本的には子どもがおこづかいの範囲を超えて勝手にネットショッピングをした場合は契約を取り消すことができます。しかし、子どもとPC・スマホ利用についてのルールを決めるだけでなく、利用限度額を設ける、PCのパスワードを共有しない、親のカードから決済できるようにしない等の対策をしておいたほうが無難でしょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)