波紋を広げる「旅券返納」… 邦人保護と渡航の自由、 どちらが大切なのか

シリアで取材活動をしていた日本人ジャーナリストが拘束され、殺害されるという痛ましい事件が起こりました。

その後、新潟県に住むフォトジャーナリストがISILの取材にため、シリアに行こうとしたところ、外務省から中止要請があり、その要請を断ったところ、パスポートの返納を求められました。旅券法に基づくパスポート返納は戦後初の措置だったようです。

この外務省の要請はかなりの波紋を広げており、海外でも今回の措置について報じられ、賛否両論となっているようです。それもそのはず、憲法では「海外渡航の自由」という権利が保障されています。しかし、外務省は憲法

シリア

●「邦人保護」と「渡航の自由」はどちらが大切か

外務省が中止要請をすること自体を疑問視する考えもありますが、国民の生命身体財産を守るべき外務省がそのような要請をすること自体は適切だったと考えます。

しかし、それを超えて、パスポートの返納命令を出し、パスポートを取り上げ、日本国外に出国出来ないように処置したことは、国民の海外渡航の自由や表現の自由を犯していると思われます。

麻薬を買いに東南アジアに行くとかISILの軍隊に入隊するために出国するとか、明かな犯罪目的で国外に出ることを禁止することは当然出来ますが、取材目的で出国することを禁止することは出来ないと思います。

このような判断は、欧米先進国の一致した考え方だと思います。日本国憲法も欧米先進国の憲法と同様に移動の自由、表現の自由を定めていますから、同じ判断になるかと思います。

 

●不測の事態が起こったら誰の責任になるのか

仮に、フォトジャーナリストが外務省の要請を無視して出国し人質になった場合、自己責任だとして、日本国が放置しても良いのでしょうか。

この点に関しては、諸外国のメディアはいろいろな考えを表明しています。

自殺しようとしている人でも国は助けるべきだとして、やはり救援活動をすべきだと言うメディアが大多数ですが、中には自己責任だから放置しても良いというメディアも散見されます。

ちなみに、日本の司法制度に詳しいある外国人ジャーナリストは、仮に、フォトジャーナリストが外務省を相手に裁判を起こしても、日本の最高裁は外務省(内閣)の判断を追認するだろうと予測しています。

残念ながら、私も同様に予測します。日本国憲法の条文は先進諸外国に負けないほど国民の自由、権利を守っていますが、最高裁による運用面では先進諸外国に負けているからです。

 

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

星 正秀 ほしまさひで

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