スピード違反の検挙はネズミみ取りなどと言われます。
ネズミ取りですからネズミ(スピード違反者)からネズミ取りの存在がわからないようにされていました。
ところが、警視庁がそのやり方を変えて、スピード違反の取り締まりについて事前にホームページで公開するそうです。その情報を事前にネズミが知っていれば、ネズミ取りに引っかかることはないはずです。ところがニュースによれば、結構な数の違反者がいるようです。
●「カカシ作戦」に意味はある?
今回、ネズミ取りをやめ、事前にスピード違反の取り締まりをしていることを公開した理由について、警視庁は「事前に公開することで抑止力となる」と説明しています。ネズミ取りではなく、カカシのように害鳥を威嚇することによって、害鳥を減らそうという作戦のようです。
ところが本当のカカシと違い、ホームページでの公開だけでは、ホームページを見る人は少なく、カカシのような威嚇効果は少なそうです。そのため、相変わらず、スピード違反者(ネズミ?害鳥?)が多数検挙されているようです。
本当にネズミや害鳥などの違法運転手を減らすには、警察官を主要な道路に立たせるのが良いと思われます。警察官(カカシ)を見れば、運転手がネズミや害鳥になることはないでしょう。しかし、それには多額の予算がかかります。運転手の自覚が大事だと思います。
●スピード違反という犯罪は特殊?
ところで、スピード違反はれっきとした犯罪です。
通常の犯罪(殺人、窃盗など)だと、実際の法益(生命、財産など)が侵害されたり、侵害されるおそれがあるときに処罰されます。日本刀を人混みで振り回せば、殺人未遂や暴行罪となりますが、だれもいない自分の家の中で振り回しても犯罪にはなりません(特別法は考慮しません)。人の生命、身体に対する危険がないからです。
住宅密集地で制限速度30キロのところを50キロで通行することは、住民の生命身体を侵害する危険がありますから、処罰することも妥当だと思われます。しかし、北海道などの見通しの良い広い道で制限速度60キロのところを80キロで走っても、ほとんど危険性はありませんが、スピード違反という犯罪は成立します。一見不都合だと思われるかも知れませんが、スピード違反などの犯罪は、抽象的危険犯と言われ、具体的な危険がなくても処罰できるとされています。抽象的な危険でも処罰することによって、交通ルールを守らせるということです。
田舎の遮断機のない踏切で数キロ先まで見通せるところで列車が来ないことが明らかな場合でも、一時停止を怠ると、道交法違反となります。一見理不尽だと思えますが、このような場合にも抽象的な危険があるとされています。
何時いかなる場合でも道交法は守らないといけません。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
*写真:TFoxFoto