ネットで商品を買う時、その商品のレビュー欄をみて買うかどうか決める人は多くいるでしょう。
しかし、中には著者が嫌いなどの理由で読んでいないと見られる人によるただの誹謗中傷を行っているレビューや、読んではいるが、必要以上に貶しているレビューが書かれることもあります。
例えば
・ゴミ以下
・買う時間が無駄
・読む価値なし
・金の亡者
などのような言葉です。実際にレビュー欄で誹謗中傷をされたとして、その削除や特定をしたいという相談をしばしば受けることがあります。
このようなレビューをされた側としては、売上げやイメージに関わる重大な問題ですが、削除や相手を特定することはできるのでしょうか。解説して行きます。
■意見・感想・論評については対応できる場合が限られる
いつも言っていることではありますが、対処するためには権利侵害があるといえることが必要になります。
レビュー欄で誹謗中傷を受けたという相談はしばしば受けるのですが、本を読んだ上で「ゴミ以下」とか「読む価値がない」などと書いているのか、それとも読んでいないで書いているのかということは、レビューだけからは読み取れないことが多いです。
仮に、実際に読んだ上でそのような書込みをされた場合を考えると、著者からすれば非常に不快に感じることはよく理解できます。しかし一方で、読者からすればその本に対して何か意見や感想を言うことはできてしかるべきです。
意見や感想を一義的に犯罪行為や他社に対する権利侵害とするのでは、自由な言論があるということはいえません。そのため、意見や感想などについて、原則的には自由にいえるという状況が必要になります。
そのため、意見や感想・論評に関しては、それが権利侵害があるといえる場合は、人身攻撃に及んでいるような場合が必要であるとされています(実際の要件は実はもっと厳しいのですが。)。
その観点から言えば、「金の亡者」については、著者に対する人身攻撃に及んでいると評し得ると思います。そのため、このようなものについては対処する余地はありますが、レビューはある特定の一言だけではなく、文章になっていることも多いわけで、その全体の文意、ニュアンスも考慮する必要がありますし、実際の本の内容も考慮する必要があります。
つまり、人身攻撃に及んでいるかどうかは、個別具体的に判断する必要があるということです。
ただし、著者に対して非難をしているだけのレビューなどは、権利侵害があると言いやすいものではないかと思います。
■Amazonは米国企業だが…
Amazonは米国ワシントン州シアトル市に本拠を置く企業です。
米国法人の場合、たとえばGoogleやTwitter、Facebookなどは、削除等をするためには裁判が必要になることが通常です。
しかし、Amazonの場合には、裁判を使わなくても対応してくれることがそれなりにあります。Amazonにも日本法人があり、そこに請求することによって一定の対応をしてくれます(ちなみに、GoogleやTwitter、Facebookも日本法人はありますが、ここは対応はしてくれません。)。
ただし、相手を特定しようとする場合には、裁判が必要になると考えておいた方がよいです。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*画像 Twin Design