コンピューター関連企業の大手「日本IBM」が行ったことにより話題となった「ロックアウト解雇」。
報道によれば、解雇対象の社員は、突然解雇通知を受けた上、その日の就業時間終了までに荷物をまとめて出ていくこと、翌日からは会社への立入りを許さないこと、期限内に自主退職をすれば退職金を上積みすることを告げられていたようです。
ロックアウトには「閉鎖・閉め出し」の意味があり、まさに文字通りの解雇方法と言えます。
日本IBM以外にも外資系企業で行われているとされるロックアウト解雇。このような解雇方法が許されるのでしょうか。また、会社としては解雇を告げつつ自主退職を促すのはなぜか。これらロックアウト解雇の問題点を解説していきたいと思います。
●ロックアウト解雇は法的にアリなのか
ロックアウト解雇という用語が法律上定められているわけではありませんので、上記のような態様での解雇が許されるか否かは、普通解雇の要件を充たすのかどうかを考える必要があります。
つまり、(1)解雇に客観的に合理的な理由があり、(2)解雇が社会通念上相当と認められる場合であるといえるかによって決まります。
この観点から日本IBMの事案をみると、解雇を告げられる以前に話合いが持たれたことや解雇相当といえる程度の業務命令違反・能力不足といった事実はなかったにもかかわらず、一方的に労働者を会社から締め出したようですから、普通解雇の要件を充たさず解雇は無効になる可能性が高いでしょう(なお、整理解雇や懲戒解雇の要件も充たさないといえます)。
●ロックアウト解雇の本当の意味
このように法律上は解雇が無効になる可能性が高いため、会社としては解雇を告げるとともに、期限内に労働者が自主退職に応じるのであれば退職金を上積みするが、時間が経過するごとに退職金の割増率を下げるという手法を採っています。
つまり、会社の主眼は労働者が自己都合退職を選択するしかないように追い込むところにあり、ロックアウト解雇の実質は会社による退職勧奨・退職強要ということになります。
●ロックアウト解雇を告げられたらどうするべきか
解雇は無効になる可能性が高いため、理屈としては解雇の無効が確定することによって職場への復帰をすることができ、また、自宅待機中の賃金請求をすることができます。
とはいうものの、解雇の有効性を争うには時間がかかるため、その間の生活の不安、新たな勤務先での勤務を続けながら裁判を行うことの苦労を考えると泣き寝入りしたくなってしまうかもしれません。
「上積みされた退職金をもらってこんな会社辞めてやる!」と真意から思える人であれば別ですが、自宅待機を争わず何も行動を起こさない期間が長くなると退職勧奨に応じたと言われてしまう可能性がありますので、ロックアウト解雇を告げられたらなるべく早く労働問題に詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)