あなたは大丈夫？意外なことが「住居侵入罪」になっているかもしれない

●建造物侵入ってどんな罪？

万引動画を撮影するためにコンビニに入った少年が、建造物侵入容疑で逮捕されたことを覚えている人も多いかもしれません。

実際に店で万引をしたわけではなく、被害はないようにも思えますが、建造物侵入とはどのような場合に成立するのでしょうか。刑法は、正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入した者について、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処すると定めています。

侵入とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうとされています。

管理権者があらかじめ立ち入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、その建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立ち入りの目的などからみて、現に行われた立ち入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは建造物侵入罪が成立します。

つまり、堂々と入ったとしても、管理権者が許すものではないだろうと考えられるならば、それは侵入です。

住居侵入の例ですが、判例は、強盗を行う意図を隠して「こんばんは」と挨拶し、家人が「おはいり」と答えた場合に、外見上は承諾があっても、真実においては承諾を欠くとして侵入を認めています。

同じく住居侵入の例ですが、家出した子供が実家に強盗目的で家に戻ってきた場合は、侵入を認めている一方、もし家出を後悔して謝罪するために家に戻ったなら侵入にならないとしています。

コンビニに万引動画を撮影するために入るのも、店は当然許さないと考えられるので、建造物侵入で逮捕することになったのでしょう。

商品を買う気がなく店に入ることも、店側が買わないなら店に入ることを許さないと考えていれば、侵入になる可能性があります。

もちろん動画サイトに動画をあげて積極的にそれをアピールするならともかく、買う気がなかったことを黙っている限り店側にはわからないので、問題になることはほとんどないと考えられます。

裁判例では、駅構内のホームがその形状によっては建造物にあたるとしたものがあります。

また、大阪の万博記念公園にある「太陽の塔」は芸術作品でありながら、その構造上全体として1個の建造物であるとして建造物侵入を認めた例もあります。

一方、原爆ドームは屋蓋が全くないかあるいはないに等しく雨露をしのぐに足りる効用すら有していないことは明白として、建造物にあたらないと判断された例もあります。

判例は、建造物にあたるかどうかをその構造からかなりはっきりと判断しているようです。意外と身近なところで建造物侵入罪は成立しているのかもしれませんね。