弁護士が実際に体験した「違法な取調べ」 5つの実例

「ネタはあがってんだ!さっさと白状しやがれっ!!」と怒鳴って取調室の机を叩く刑事さん。

一昔前のドラマなどではおなじみのシーンですが、こういった取り調べは違法であるとされています。なぜ、こういった取り調べが違法であり、その結果どうなるか、ということについて簡単にお話します。

取り調べ警察●違法な取り調べとは

法律上、調書の作成過程において任意性に疑いのある自白については裁判の証拠にすることは出来ないとされています。

「任意性」とはこの場合、『被疑者、被告人が自由な意思で行うこと』と理解していただければOKです。

ここで注目していただきたいのは、「任意性が無い自白」ではなく、「任意性に疑いのある自白」という点です。要するに、「自白を強要されたとまで断定できなくても、その可能性(疑い)がある自白」というものは裁判では証拠にすることは出来ないということになります。

上の例では、怖い刑事さんにこれ以上怒られないように、事実に反することでも認めてしまう可能性があるので、このような取調べは違法と評価されます。

結果、そのような取り調べをして作られた自白調書は、裁判には使えないことになります。

以下では、弁護士生活5年目を迎えた筆者が、これまでに聞いた違法な取調べの実例を何件かご紹介いたします。

 

●実例:1

「1年目の新人に弁護されて、可哀想やな!」と言われた。

こういうことを言われると、被疑者としては「弁護士を信頼するより刑事の言うとおりにしておいた方がいいのか。」と動揺してしまいます。違法な取調べといえます。

 

●実例:2

「認めたら不起訴にしてやるから調書にサインしろ。」と言われた。

そもそも刑事さんに起訴不起訴を決める権限は有りませんけどね。典型的な利益供与の例です。

 

●実例:3

「サインしたら懲役○年、しなかったら○○年になるぞ。」と言われた。

いやいや、あなたは裁判官ですか?!アウトです。

 

●実例:4

「弁護士なんか金目当てでやってるだけ。信用したら馬鹿をみるぞ。」と言われた。

実例1と同様、弁護士との信頼関係を崩して取調官の意に沿う言動をさせようとしたのでしょう。金目当て?いえいえ、一生懸命仕事していただけですなんですけどね……。

 

●実例:5

長時間延々と「お前は卑怯者だ。嘘つきだ。親の顔が見たい。」などと言われ続けた。

人の尊厳を著しく害するような言動は違法です。

 

冤罪事件として有名な足利事件、志布志事件、昨年死刑囚として収監されていた袴田巌さんが釈放された袴田事件。

これらはいずれも取調官による自白の強要(違法な取調べ)が問題となった事件です。これらは新聞などでも大きく報道されました。ただ、報道されるような大きな事件だけではなく、意外と身近なところにも冤罪を作る要因となる違法な取調べは少なからず存在しているということを実感しています。

 

*著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。お客様に喜んでもらえた時に一番やり甲斐を感じています。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)

河野先生
河野 晃 こうのあきら

水田法律事務所

兵庫県姫路市本町68-170大手前第一ビル3階

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