大きな事件や有名人が当事者である裁判などで、しばしば「●●地方裁判所で和解が成立しました」などということを聞いたことがある方もいらっしゃることと思います。
しかしながら、そもそも和解とはどのようなことなのか、なんで裁判なのに和解するのか、など、いろいろ疑問に思うこともあるのではないでしょうか。
今回はこの和解、とりわけ裁判上の和解について詳しく説明したいと思います。
■和解って何?
そもそも和解とは何かということですが、法律的には「当事者が互いに譲歩し、争いを止める合意をすること」という定義がなされています。とはいうものの、この説明でもあまりイメージがわかないと思いますが、簡単に言うと、白黒はっきりつけず、一方がもう一方にある程度の金銭を支払ったり、謝罪したりして、裁判を終わりにするということです。
■和解のメリット
裁判になるのになぜ和解をして裁判を終わらせるのか、いまひとつピンとこない方もいらっしゃると思います。ただ、和解には以下のようなメリットがあるのです。
・裁判を最後まで進めるより短期に事件が終結する
・一般的に「仲直り」のようなイメージがあり、判決で白黒はっきりさせるよりも印象が良くなる可能性がある
・早期に和解が成立すれば法廷で証人尋問等を避けることができ、外部に公表したくない事項を法廷で語る必要がなくなる
■日本人に和解は合っている?
私も経験がありますが、不倫や離婚の裁判などで和解が成立しないと当事者が法廷で証言することになり、その際、性行為の有無や回数、具体的内容など、当事者にとって極めて話しにくいことを法廷で証言しなければならないことも少なくありません。
このような場合に、裁判所の方から和解の勧告がなされ、和解の条件を話し合うといったことが行われるのです。
白黒はっきりつけない和解という解決方法は日本人の気質とあっていることもあり、詳しく調査したわけではありませんが、聞いたところによると裁判所の事件の約4割が和解で終了しているそうです。
■和解のデメリット
このように当事者にとってメリットが多い和解なのですが、デメリットもあります。
一番のデメリットは、和解の場合は判決文が示されないため、真実が明らかにならないまま事件が終結してしまうという点です。
生命が損なわれたような事件や、大企業の不祥事が原因である事件などは、金さえ払えば解決というわけではありません。原因をしっかり究明し、二度と同様のことが起こらないようにすることが非常に重要であります。
このような事件の場合は、和解で終わらせるより、判決文でしっかりと真相を明らかにすることがふさわしいと言えるでしょう。
とはいうものの、個人間のトラブルの場合には、和解で早期に事件を終結させるという和解のメリットが大きいことは間違いありません。事件を弁護士に依頼される際は、和解ができる可能性があるかどうか聞いてみるのもよろしいかと思います。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)
*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)