最近、ネット上で、「警察も黙認?放置されている法定単位違反が、大手通販などで横行か」という記事が話題となっていました。
内容を要約すると、物の長さを計るメジャーや、重さを量る計量器などの表記が「計量法」に反しているのにもかかわらず、ネット通販などで商品が普通に売られているということのようです。
記事によると、例えば、インチとセンチが併記しているメジャーなどは違法となり、また、複数の単位で計測できる計量器なども違法ということです。
しかし、その記事を見た人からは「なんでダメなんだ?」「どういった経緯で作られた法律なのか…」などと不思議に思う人が多かったようです。
そこで、今回はこの謎めいた「計量法」について解説してみたいと思います。
■やっぱり違法
結論からいうとネット上でも書かれているとおり、インチとセンチ(cm)を併記したメジャーは、計量法の規定に反しており、違法です。
違反すると50万円以下の罰金となる普通の犯罪とされています。
■なぜ測量単位の併記はダメなのか
今回の計量法という法律では、世の中の様々な測量単位等に関して規制がされています。
計量法9条では、計量器(メジャー、定規、重量計、温度計等)には、センチ(cm)、摂氏温度、キログラム(kg)といった法定計量単位で表記しなければならないことを定めています。
例えば、非法廷計量単位であるインチや華氏温度を単独で表記することや、併記することも禁止されます。
ところが、最近では、外国製の便利な性能の計量器がネット通販等で輸入販売され、それなりに市場に流通している事態が発生しているようです。
たしかに、江戸時代ならともかく、国際化が進んだ現代では、インチやポンドに馴染みのある人も多く、併記まで禁止する必要はないようにも思えます。
計量法は、「計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的」としています(計量法1条)。
なんとも抽象的ですが、要するに計量単位がいくつも混在していると、取引や日常生活、市場経済に不要な不便や混乱を招きかねないので、国が単位を統一しようということです。
■現代において合理性はあるのか
経産省によると、日本では、701 年の大宝律令によって初めて計量制度が統一されたとされています。
それから1300年も経過し、国際化も進んでいることも考えると、併記くらいは認めてもよさそうな気もしますが、現在のところ、計量法の規定を改正する予定はないようです。
実際には警察や行政が計量法違反の取り締まりを強化している様子はありませんが、読者の皆様は計量法の規定をどう感じたでしょうか?
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)