神奈川県警の警部補が「自分の股間付近を触った疑い」で逮捕されるというニュースがありました。
今回の事件は、他人の身体に触れたり、自分の性器を露出させたりしたわけではなく、自分の身体の一部を触っていただけなのに捕まったという点で、意外に思う方が多いと思います。
しかしながら、神奈川県迷惑行為防止条例(以下「迷惑防止条例」といいます。)の第3条は「卑わい行為の禁止」について定め、公共の場所(公園や路上など)や公共の乗物(電車やバス)で、他人に対し、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で」する一定の行為を禁止しています。
ここにいう一定の行為についての典型例は痴漢と盗撮であり、同条1項1号が痴漢(衣服等の上から他人の身体に触れること)を禁止し、同条1項2号が盗撮(他人の下着や身体を見たり記録したりする目的で、写真機器を設置・人に向けること)を禁止しています。
しかし、同条1項3号が、「前号(1号、2号の痴漢、盗撮)に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。」を禁止しており、今回捕まった警部補は、この条文に違反した容疑です。
●今回のケースは「卑わいな言動」になる?
報道によれば、今回逮捕された警部補は、約20分間にわたって被害女性の前で股間付近を触っていたとのことであり、仮にこれが真実であるならば、迷惑防止条例3条1項3号の「卑わいな言動」に該当することは十分あり得ます。
「陰茎のポジション(いわゆる「チンポジ」)を変えるために触った」というのであれば約20分間も触り続ける必要はなかったのであり、また、触っていた場所が「股間」ですから、(触り方にもよりますが)故意に(意図的に)女性を羞恥させるために触っていたと判断されたのではないかと思います。
他人を「著しく羞恥させ」るかどうか、他人に「不安を覚えさせる」かどうかは、言動の具体的な態様、内容も当然考慮されますが、最終的には一般的な常識(一般人がどう思うか)で判断するほかありません。
「他人に触れていないから大丈夫」という言い訳は通じないことを覚えておきましょう。
また、「卑わいな『言』動」と規定されている通り、卑わいな「動き」だけでなく、卑わいな「言葉」を発することも迷惑防止条例3条1項3号に該当することがあることに注意しましょう。
*著者:弁護士 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)