「ハイスコアガール」騒動、何が問題なのかを弁護士が解説

人気マンガ「ハイスコアガール」で登場したキャラクターの著作権について騒動が起きています。

「ハイスコアガール」は株式会社スクエア・エニックスが発行する漫画で、その中で株式会社SNKプレイモアが著作権を有するゲーム作品のキャラクター等が無断使用されたとして、同社がスクエニ社を著作権法違反で刑事告訴し、家宅捜索のほか書類送検等がされているようです。

これを受け、知的財産法の研究者や実務家などから、「『ハイスコアガール』事件について―著作権と刑事手続に関する声明―」が出されました。

「本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、刑事手続が進められることに反対する」という内容です。

この声明がどのような問題意識でされたものなのか、また、この声明の内容は妥当なものといえるのでしょうか。

本屋■萎縮効果に対する懸念の表明

声明によると、今回の「ハイスコアガール」は、「著作権侵害の要件としての類似性が認められない可能性、また適法な引用(著作権法 32条)に該当する可能性等」があり、「今後の…あらゆる表現活動に対して重大な委縮効果をもたら」すとされています。

つまり、今回の声明が問題視しているのは、表現行為に対する萎縮効果です。萎縮効果というのは、法令の適用を恐れて、本来自由に行いうる表現や行為が差し控えられることを指す言葉です。

たしかに、何が著作権侵害にあたるのかは、最終的には裁判所が判断することになり、かなり微妙な判断を要するものも少なくありません。その意味では、この声明がいうところも一理あるとは思います。

 

■捜査するべきではなかったのか?

しかし、そもそも捜査を含めた刑事手続は、本当に犯罪行為があったかどうかの証拠を得て、判断をしていくという手続きです。

また、あらかじめ犯罪の成立が確定的という場合はありませんし(確定的かどうかは裁判所が判断するからです)、さらにいえば、著作権侵害は親告罪であり、実務上、告訴があってからでないと捜査も開始しません。

逆に、告訴を受理すれば捜査をする必要があります。

そのため、声明の趣旨や意図は理解できるものの、それを額面通りに受け入れることはできないでしょう。

 

■ただし、著作権侵害の成否の判断は難しい

「ハイスコアガール」では、SNKプレイモア社がゲームのキャラクターについて美術の著作物として著作権を有していたことについては、特に争いがないように見えます。そのため、キャラクターを利用するためには、原則としては同社の承諾を得る必要があります。

しかし、声明でも言われているとおり、そもそも類似性がないとか、引用 に当たる場合は、著作権侵害には当たりません。

類似性は「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を直接感得できるかどうか」で判断されますが、「ハイスコアガール」では、キャラクターの描写だけではなく、使用する技の名前等も使われており、読者に対し元のキャラクターを意識させるような描き方がされています。

そのため、類似性を争うことは難しいように思われます。

そこで、引用に当たるかどうかですが、この点はまさに争いになるところでしょう。

ちなみに、適法な引用が認められるための要件は、以下のとおりです。

1 公表された著作物であること
2 公正な慣行に合致すること(引用の必要性があること、どの著作から引用されたものなのか明示されていること、著作者の意に反する改変をしていないこと、その分野の慣行に従っていること)
3 目的が正当な範囲にあること(引用された部分が明確であること、引用する側が「主」で、引用される側が「従」といえる関係にあること)

刑事手続のほかに民事訴訟も進んでいるということなので、今後の展開に要注目です。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

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