スーパーにて「広告の品!数量限定!」とのポップをつけて、いつもの商品がいつもの値段で売られていたとの書き込みが話題になっていました。
書き込み主は、いつもと同じ値段、また、広告を出していないのに「広告の品!」「数量限定!」などと謳うことに違法性はないの?ということが気になっているようです。
今までも、安くなっているように見せて実は値下がりしていない「二重価格」が問題となったり、この手の表示は度々話題となります。今回の2種類の表示は法律ではどのように扱われるのでしょうか。
■お客さんを勘違いさせる広告はNG
「広告の品!」「数量限定!」などと表示されていると、あなたはどう思いますか?
「広告で宣伝するぐらいだから、いつもより安くなっているのだろう」「数量限定ということは、お店の利益が減らしてでも安くしてくれているか、なかなか手に入らない商品なのだろう」などと思い、購入の意欲が生じるのではないでしょうか。
お店側としても、そのようなお客さんの反応を期待していると思われます。
しかし、お客さんに対して商品が安いなどと期待させておいて、実態が異なっていれば、お客さんとしては騙されたと思うでしょう。騙されたとは言えなくとも、勘違いを誘うような手法は、消費者にとって望ましいものではありません。
そのために、不当景品類及び不当表示防止法は、事業者による不当な表示を禁じています。
■優良誤認表示と有利誤認表示とは
不当景品類及び不当表示防止法は、不当な表示としていくつかの事項を規定しますが、今回の事案で問題となり得るのは、優良誤認表示や有利誤認表示です。
・優良誤認表示
商品の品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示です(同法4条1項1号)。
「数量限定!」と表示されているのに、いつもと同じ商品であるなど、実際には数量が限定されていない場合には、いわゆる限定品であると誤認させる表示として、優良誤認表示に該当する可能性があります。
・有利誤認表示
商品の価格その他の取引条件が、実際の商品のものよりも著しく有利であると誤認させる表示です(同法4条1項2号)。
「広告の品!」との表示が、有利誤認表示に該当するかは一概に判断できませんが、通常は広告に表示するということは、安くて集客に役立つ商品でしょうから、そのような場合にいつもと同じ価格であれば、有利誤認表示に該当します。
しかし、例えば、そのお店の広告が、店長のおすすめ商品を紹介するものであって、安さを表示するものではないという事情があれば、「広告の品!」と表示していて価格が安くなくても有利誤認表示には当たらないでしょう。ただ、そのような場合でも、お店側にお客さんを誤認させようとする考えがあれば、どこかに有利誤認表示と評価される事情が生じてしまうと思います。
なお、消費者庁のガイドラインでは、「閉店」「倒産」「直輸入」「直取引」などと表示されている場合には、お客は商品が安い価格で販売されている期待を持ち得るとしています。
■お客さんに誤解を与えないことが大切
優良誤認表示や有利誤認表示が認められれば、消費者庁から措置命令が出され(同法6条)、それに違反する行為は犯罪行為です(同法15条)。
それぞれの表示について、不当表示にあたるか否か判断しなければなりませんが、優良誤認表示や有利誤認表示の文言は抽象的ですから、その適用範囲は相当に広いと思ったほうが安全です。
同法の各規定に違反するか否かと考えるよりも、お客さんを誤認させようとしていないか、お客さんが誤認するおそれがないかと考えて対応すると良いと思います。そうすれば、仮に消費者庁等から不当表示を疑われても、正当性を主張することができるでしょう。
*著者:弁護士 荻原邦夫(りのは綜合法律事務所。刑事事件を主に取り扱っています。お客様に落ち着いていただき、理解していただけるよう対応します。)
*画像: TK Kurikawa