沢田知可子さん作詞家と訴訟へ…替え歌でも「著作者人格権侵害」なの?

歌手の沢田知可子さんが作詞家の沢ちひろさんに著作者人格権侵害で訴えられたことが分かりました。

沢田さんがテレビ番組で替え歌を歌ったり、勝手に英語の歌詞を追加した曲をアルバムに入れて発売するなどしたことが原因と報じられています。

今回は「著作者人格権」の侵害とされていますが、この著作者人格権とはいったいどのようなものなのでしょうか?替え歌がこの権利を侵害するのかどうかなど、今回のニュースについて法的な面から解説していきます。

楽譜

■著作者人格権とは何?

著作者人格権とは、著作者の著作物に対する人格的ないし精神的利益を保護するための権利です。

著作者人格権は、人格的ないし精神的利益を保護するための権利である点で、著作者が著作物を利用して経済的利益を独占的に獲得する権利である著作権と区別されます。

わかりにくいですが、要するに、著作者人格権というのは、著作者が著作物に込めた思い、思想、感情、気持ち等の著作者の人格に関わる利益も権利として保護しましょう、権利として保護して著作者が著作物に込めた思い、思想、感情、気持ち等を踏みにじる行為を禁止しましょうということです。

 

■著作者人格権の中身

著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権、名誉・声望保持権があります。ひとつづつ解説します。

 

公表権:自分の著作物を公表するかどうか、またいつ公表するかを決定する権利です。

氏名表示権:著作物に氏名を表示するかどうか、表示するとして本名を表示するかペンネームを表示するかを決定する権利です。

同一性保持権:著作物を勝手に変更したり切除したりその他の改変をしたりすることを禁止する権利です。

名誉・声望保持権:著作者の名誉や声望を害するような方法での著作物の利用を禁止することができる権利です。

 

著作物は思想や感情を創作的に表現したものですので、著作者に無断で著作物を公表したり氏名を表示したりすれば、著作者の人格権を害しかねません。著作物の内容を著作者に無断で改変したりすれば、著作者が著作物に抱いている思い、思想、感情、気持ちを害しかねません。

また、著作物の利用も利用の方法によっては著作者の名誉や声望などの人格的利益が害される場合があります。そこで、こうした権利が著作者人格権として保護されているわけです。

 

■替え歌や歌詞の追加はアウト

替え歌は、著作者の同一性保持権を侵害する行為であり、著作者人格権の侵害の典型例です。

歌詞を追加することも著作者の同一性保持権を侵害しますので、著作者人格権の侵害になります。

無断で替え歌を作ったり歌詞を追加したりするような行為は、替え歌や追加の内容が世間の好評価を得ようが得まいが、著作物に込められた著作者の思いを踏みにじることになるからです。

 

■著作者人格権を侵害された場合

著作者人格権を侵害された場合、著作者は、侵害行為の差し止めを求めたり、名誉回復の措置を求めたり、損害賠償を請求することができます。

また、著作権人格権を侵害した者は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはこれらの併科」という罰則を科せられる可能性もあります。

今回、小学生の頃に亡くなった母親を思って著作者が作詞した「会いたい」という曲を「安定したい」に替えてテレビ番組で歌ったということですから、著作者が怒って当然です。

番組は盛り上がって視聴率も上がったんでしょうが、後先考えないといけませんよね。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

東京都千代田区霞が関3‐3‐1 尚友会館4階

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