ここ数十年でマンション暮らしの人が増え、騒音問題など、近隣住民の間でのトラブルが増えているように感じます。
その中のひとつに、ベランダでの喫煙を巡るトラブルがあります。喫煙率は年々減っているとはいえ、受動喫煙を気にする人が増えたことにより室内では吸えずに、ベランダで喫煙する人は増えてきている可能性もあります。
自分や家族が吸わないのに、巻き込まれてしまう喫煙トラブルはいつ自分の見に降りかかるか分かりません。
今回は、ベランダでの喫煙について法律上ではどうなるのかを検討してみたいと思います。
■ベランダでの喫煙は犯罪か?
この点、ベランダで普通に喫煙すること自体は犯罪ではありません。
地方公共団体の条例で路上での喫煙を禁止している場合がありますが、これらの条例にも違反しません。
■臭いなどで損害賠償請求できるのか?
この点、臭いが入ってくるというだけでは損害賠償請求できません。
一定程度はお互い様として我慢すべき範囲内です。
自宅や自宅のベランダで喫煙すること自体が犯罪でない以上、喫煙する方にも、喫煙をする自由(憲法13条)があると考えます。
しかし、喫煙の自由といっても、他人の身体を著しく侵害する場合にまで許されるわけではありません。
喫煙による被害者の被害の程度が、一般の人の目から見て、ここまで酷いと被害者の方で我慢することができないだろうなという程度を超えているような場合には、不法行為(民法709条)として損害賠償請求できると考えられます。
●実際に喫煙者が訴えられたことがある
最近の裁判例ですが、マンションの上の階にいる喘息等の疾患を抱えていた住人が、下の階のベランダで喫煙を続けていた住民を訴えたケースがあります。
このケースで、裁判所は、マンションの中やベランダでの喫煙でも、マンションの他の居住者に与える不利益の程度によっては制限される場合があるし、他の居住者に著しい不利益を与えていることを知って、喫煙を続け、何も防止措置を採らないようであれば不法行為になることもあると述べ、5万円とわずかですが原告の損害賠償請求を認めています(名古屋地方裁判所平成24年12月13日判決)。
このケースは、下の階の喫煙者が、上の階の住民のクレームに対し、上の階の住民の生活音が気になっていたことから、ベランダへの喫煙行為をやめようとしなかったものですが、感情的な対立が発展して裁判にまでなったものと思われます。
相手がその気ならこっちだってという場合もあるかとは思いますが、トラブルを避けるためには、人が嫌がるとわかっていることは止めた方がいいでしょう。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)