リベンジポルノを防ぐための「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」が、平成26年11月19日、成立しました。
この法律は、第三者が撮影対象者を特定できる方法で、個人的に撮影した性交又は性交類似行為や性器等が写っている画像記録などを、インターネットに掲載したり、不特定多数に提供するなどした場合に、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処することなどを内容にしています。
これによりリベンジポルノの取締りに効果があるのか、検討してみようと思います。
■実は現行法でほとんど対応が可能
リベンジポルノが公開された場合に該当し得るのは以下の罪になり得ます。
・わいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項)
2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金
※ただし、少なくとも現在の日本では、性器が写り込んでいる必要がある。
・児童ポルノ公然陳列罪(同法7条4号)
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金
※被写体が18歳未満の場合
・名誉毀損罪(刑法230条1項)
3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
・ストーカー規制2条8号
6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
このように色々な罪を当てはめ得るというのが実際のところであり、法定刑も名誉毀損罪と実質的に同じです。
そのため、この法律がどこまで必要だったのかということについては疑問なしとはしません。
■新法に意味はあるのか?
もっとも、リベンジポルノを直接的に法律違反であると規定されることで、このような行為がダメなことであるということが周知される効果はあるといえます。
新法でも、国や地方公共団体に、リベンジポルノにつながるような写真を撮影したり、他人に提供しないことなど、被害の発生を未然に防ぐための必要な教育・啓蒙を行うことを求めています。
また、法的な請求権というわけではないですが、撮影対象者が死亡している場合、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹であれば、その画像記録等の削除を求めることができるという規定がされました。
これまでは、被害を受けた本人からしか削除を求めることができなかったので、遺族が削除を求め得るという点は、大きな前進であるといえます。
しかし、このような法律ができらからといって、リベンジポルノがなくなるというわけでは当然ないと思います。被害に遭わないためには、撮影をしない・させないということが重要です。
被害を減らすためには、個々人がこの点をきちんと徹底する必要があるでしょう。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)