「デーブ楽天が来季完全オフ撤廃、休日にも選手に顔を出させる」というニュースが話題になっていたのはご存知でしょうか?
つまり、休みの日でも球場に来て他の選手とコミュニケーションをとったり、ストレッチするなどを行って欲しいということのようです。この「休日にも球場に行かなくてはいけない」という環境に対して「労働基準法違反では?」という声もあがっているようです。
それでは、労働基準法で休日についてはどのように定められているのでしょうか?今回は、楽天イーグルスの話を踏まえて、休日労働について解説したいと思います。
■労働基準法で「休日」は週に1日で良い
労働基準法は、労働者に対し、少なくとも1週間に1日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えないといけませんよ、と使用者に義務付けています(労働基準法35条)。
これを週休制の原則といい、労働者が人間らしい生活を営むための最低条件の一つです(労働基準法1条参照)。
最近、「週休二日」がほとんどだと思いますが、労働基準法上は、週1日休日を与えれば、法律に違反していないことになります。
「週休二日」の場合、1日が労働基準法で義務づけられた休日(法定休日)、もう1日が会社自らが任意に決めた休日(法定外休日)ということになります。
法定外休日に出勤させた場合、労働者との契約には反するかもしれませんが、労働基準法違反ではありません。
休日とは労働者が労働義務を負わない日のことですが、原則として、一暦日(午前0時から翌午前0時)を休日として与えなければならないことになっています(行政解釈)。
■野球選手も労働者?
野球選手が労働基準法の労働者に当たるかどうかについては争いがあります。
野球選手が自分の能力・技術・実績をもとに球団と契約し年俸も交渉している点やCMに出たりして球団以外から収入を得ている選手もいる点を捉えて、野球選手は個人事業主であって労働者ではないという見解もあります。
他方で、野球選手も球団や監督の指揮命令を受けている点を捉えて、やはり労働者であるという見解もあります。
労働基準法の労働者は、仕事の依頼や業務の指示等を拒否することができるか、業務遂行について具体的な指揮命令があるか、勤務場所や勤務時間等について拘束されるか、他人が代わりに業務に従事することも認められるのか、業務遂行に必要な機械・器具の費用を誰が負担するのか、他から仕事をもらって収入を得たりすることができるかといった事情をもとに総合的に判断されます。
そうだとすると、野球選手の場合、一括りに労働者であるとかないとかいうことはできず、一人一人労働者であるか労働者でないか判断する必要があると考えます。
野球選手も、使用者の指揮監督の下で労務を提供していると評価できるのであれば、労働基準法の労働者に当たると考えるわけです。
休日にも顔を出させるという話ですが、選手が法定休日の出勤を断れないような状況であれば、労働基準法の労働者に当たり、たとえ結束を高めチーム力を向上させるというという目的でも、たとえ野球の練習をさせず絵画の鑑賞であったとしても、原則として労働基準法に違反すると考えられます。
労働基準法に違反して休日労働させた場合について、6ヶ月以下の懲役とか30万円以下の罰金といった罰則も定められています(労働基準法119条)。
■例外はあるが
例外的に、使用者は、労働組合や労働者の過半数を代表する者との間で書面で労使協定を結び、行政官庁に届出をした場合、労働者に休日労働をさせることができます(労働基準法36条1項、通称:三六協定)。
この場合、使用者は、労働者に休日労働させても罰則を科せられることはありません(免罰的効果)。
ただし、労働者に休日労働を義務づけるためには、就業規則にそれなりの規定を設けるか、労働者の個別の同意を得る必要があります。
また、使用者は、労働者に対して休日労働させた場合、割増賃金を支払うか、代替休暇を与えるかしなければいけません(労働基準法37条1項)。
休日労働の場合、割増賃金は、「通常の労働時間または労働日の賃金」の35%以上の賃金を払う必要があります(労働基準法37条1項、2項、割増率令)。
野球選手の場合年俸制だと思いますが、年俸制だとしても定められた年俸以外に割増賃金を支払う必要があります。
さらに三六協定によって割増賃金を支払って休日労働させることができるといっても限度があります。この点、厚生労働大臣がその限度となる基準を定めており、基準に従わない場合、行政官庁の助言や指導の対象となる可能性もあります。
みなさんが働く環境で何か気になることがあった際は、以上のことを踏まえて照らし合わせてみると良いと思います。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)