「ライバル会社へ転職禁止」の決まりを守らないとどうなるのか

転職をしようとしたら会社から「ストップ」がかかり、なぜかと聞くと、ライバル会社へ転職はできないと「就業規則」に明記されていた……このようなことはよくある話です。

ライバル会社に自社のノウハウなどを盗まれては困るという理由などから、競合他社への転職を禁止しているというわけです。

しかし、職業を選ぶのは個人の自由でもあるため、転職禁止の決まりは不当のようにも思います。もし、この決まりを守らないとどうなるのでしょうか。解説してみます。

ビジネスマン

■競業避止義務

こうしたライバル会社に転職しちゃいけないといった義務のことを競業避止義務といいます。

企業としては、辞めた従業員を通じてライバル会社に自社の技術情報や得意先を奪われてはたまらないという思いがあり、就業規則・秘密保持契約書・誓約書といった形で競業避止義務や違反した場合のペナルティを定めたりするわけです。

 

■辞めた従業員の職業選択の自由

他方で辞めた従業員には職業選択の自由(憲法22条1項)があります。

辞めた会社から給料をもらえるわけでもないのだから、どこでどう働こうと文句を言われる筋合いはないという話です。

 

■競業避止義務の有効性

競業避辞義務の有効性が問題となった裁判例は数多く存在します。

退職後の競業避止義務については、辞めた従業員の職業選択の自由等を不当に拘束するものとして原則として無効、例外的に退職前の地位、競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、代償措置の有無等によっては職業選択の自由等を不当に拘束するものとまで言えず有効といったものが多いようです。

期間制限については、1年とか2年程度であれば有効となる可能性が高いですが、5年以上となると無効となる可能性が高いようです。

また、全従業員を対象とする場合には無効となりやすいですが、機密性の高い情報に接する者だけに限定して競業避止義務を課す場合には有効になりやすいようです。

競業が禁止される業務についても、ライバル会社のこれらの会社だけは駄目だとか、仕事内容について営業職や技術職だけは駄目だとか、より具体的・詳細な限定があれば有効となりやすいと考えられます。

地域についても、同じ商業圏内の同業他社は駄目だという風に絞った方が有効となりやすいと考えられます。

代償措置の有無については、制約に見合った見返りがあれば有効となりやすく、なければ無効となりやすいと考えられます。

 

■競業避止義務違反の場合

従業員が前就業先との競業避止義務に違反してライバル会社に転職した場合、前就業先との秘密保持契約書・誓約書・就業規則に従って、退職金を減額されたり、違約金を請求されたり、就業の差し止めを請求されたりする可能性があります。

また、従業員が、会社内で企業秘密として厳重に管理されていた顧客情報や技術情報を転職先に開示したり利用したりした場合、不正競争行為であるとして処罰される可能性もあります。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

東京都千代田区霞が関3‐3‐1 尚友会館4階

コメント

コメント