居酒屋なのに自転車で来店させて良いの?居酒屋3社に聞いてみました

「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」——道路交通法65条1項にはこう書かれています。

ここで言う「車両等」には自転車等の軽車両も含まれているので、自転車でももちろん飲酒運転として違法となります。自転車の飲酒運転に対する取り締まりはここ数年でかなり厳しくなり、7月には和歌山県で自転車による飲酒運転で女性が逮捕されたというニュースもありました。

しかし、居酒屋などのアルコール提供側はどうでしょうか。お店によっては駐輪場が用意されているところもあり、駐輪場を用意することで店が自転車での来店を助長しているようにも思えます。

飲酒運転となるおそれがある者についてお酒を出すことは、道路交通法上違法になります(65条3項)。また、飲酒運転には酒気帯びと酒酔いの2種類がありますが、お酒を出した相手が酒酔い運転を行った場合は、処罰の対象にもなります(道交法117条の2第1号)。

ただし、店側が認識できなかったためにお酒の提供をしてしまった場合まで、お酒を提供したことが違法、罰則の対象となるわけではありません。自転車は自動車よりも手軽に乗れる分、飲酒運転も多そうですが、居酒屋は自転車での来店客に対処できているのでしょうか。

大手の居酒屋チェーンと、地方の小さな居酒屋に対して、自転車での来店客についての見解を聞いてみました。

お酒

● 専用の駐輪場は設けていない

大手居酒屋経営企業A社では、都心や地方問わず駅前に出店しており、駐輪場はほとんど設置されていないようです。この居酒屋経営企業は、チェーン居酒屋が多く入っているビル等でよく見かけますが、確かに大通りに面していたりして、店自体が駐輪場を用意していることはあまりないように思います。

自転車で飲みに行く人は多くても、勝手に道路にとめる人が多いのかもしれません。なお、A社によれば、店舗に駐輪場の設置がないことが多いため自転車での来店の割合や、どの客が自転車で来ているかもわからないようです。

そこで、店の中からでも客が来る様子が見えそうな個人居酒屋の経営者Bさんにも聞いてみましたが、駐輪場を用意しているわけではないし認識できないとのお答えでした。店の前に自転車がたくさん止まっていることは明らかなのですが、道路に勝手にとめているだけなら確かに店が駐輪場を用意していることにはなりません。

店が駐輪場を用意しているわけではないとの答えは別の個人の居酒屋経営者からも聞くことができ、店の前に多く自転車がとめられてることを店の問題とはあまり考えていないようでした。

 

●違法性は認識している

3社とも、自転車での飲酒運転は違法になるということは認識しているとのことでした。

しかし、駐輪場を店が用意しているわけではないので、店が自転車での来店を許容しているものではないという姿勢のようです。ただ、駐輪場を用意していなくても酒を飲んで明らかにふらふらしている客が自転車に乗って帰るのを見ていた場合は、飲酒運転を認識していたとして店も責任を問われると考えられます。

また、駐輪場を用意している居酒屋も中にはあり、そのような居酒屋ではやはり飲酒運転を予測し得るとして、駐輪場がない店よりも個別の確認などをすることが求められると考えられます。

しかし、自転車は自動車と違い、簡単に押して帰ることが出来ますし、客が店から見えなくなったあたりで自転車に乗って帰れば、飲酒運転を確かめることは難しくなります。確認をとっても、客が自転車を押して帰ると答えたような場合はお酒の提供を拒否する理由はなくなると思えます。

 

●居酒屋が行っている飲酒運転対策

それでは、実際に居酒屋は自転車での飲酒運転対策を行っているのでしょうか。

A社によると、店舗の入口付近に「飲酒運転禁止」のポスターを掲示することによって来店者に周知し、車両を運転して帰る者についてはアルコールの提供を断っているとのことです。

客が飲酒するつもりで来ていれば実効性は低いように思いますが、すでに述べたような都心のチェーン居酒屋の立地条件では、店に対して一人一人の客に対して交通機関、酔ったときの帰り方の確認を求めることはかなり重い負担になってしまいます。したがって、そのような店で客が飲酒運転をして帰ったとしても、お酒を提供した店に責任が追及できるとは限りません。

一方、個人経営Bさんによると、特に個人に対する確認等の対策をとってはいないということでした。

自転車での飲酒運転が見つかっても必ず逮捕されるというわけではなく、注意で終わることも多いのが現状です。ただ、自転車であっても飲酒運転は危険なものであり、事故を起こして人に怪我を負わせた場合は、逮捕され処罰を受ける可能性は高いです。

また、事故の相手に対しては過失が強く認められ、多額の賠償金を支払うことになるおそれもあります。自転車での飲酒運転を減らすためには、自動車同様、その違法性、危険性が社会に強く認識される必要があります。

 

●店側も新たな対策が必要か

今回駐輪場の設置状況や飲酒運転への対策について取材を依頼した大手居酒屋経営会社の中には、社内での検討の結果、回答は控えるとの返事しかもらえないところもありました。しかし、店が対策をとっていることを積極的にアピールすることで、客も自転車で来店しづらくなります。

現状の対策でも、店側が責任を問われることは稀だと思いますが、自転車での飲酒運転に対する取り締まりが厳しくなってきている現状に合わせて、店側も自転車での来店客に対する対策に本腰を入れる時期なのかもしれません。

 

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星 正秀 ほしまさひで 弁護士

星法律事務所

東京都中央区銀座2−8−5石川ビル8階

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