アメリカ発の飛行機内で客の男性が「アフリカに行き、エボラ出血熱に感染している」 と発言し、着陸後、当局に連行される事態がありました。
男性は連行される際に「嘘をついた」と話しているようですが、乗客からしてみればたまったものじゃないでしょう。もし日本の上空を飛ぶ飛行機で同じ様なことがあった場合、嘘をついた人はどのように扱われ、どのような責任を追うのでしょうか。
■日本でも入院措置は可能
エボラ出血熱は、感染症予防法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)において、大変感染力が強く、蔓延の危険が高い一類感染症として指定されています。
患者の意思に基づく入院を促す入院勧告を経て、感染者が自主的に入院しない場合であって、感染症のまん延を防止するために必要があるときは、都道府県知事による72時間の入院措置が採られます。
さらに、72時間経過後も、入院治療継続の必要があって、本人が入院勧告に従わない場合には、保健所に設置する感染症の診査に関する協議会の意見を聴いた上、10日ごとに入院措置を継続できます。
■不服申立て
ただし、日本の場合、入院措置の前に、患者の自主的な入院を促す勧告をまず発することが求められており、いきなり連行することは、行政法規の手続違反となる可能性があります。
また、入院措置が継続した場合は、不服申立てが可能です。
なお、本人が明らかに冗談でエボラ出血熱に罹患していると申告しており、エボラ出血熱に感染していないことが明白な場合には、入院措置は違法となります。
■冗談を言った人の罪
冗談でも、航空機内で咳をしながら「アフリカに行った。エボラ出血熱に罹患している。」などと申し出れば、これだけ世界中で蔓延が危惧されている危険な感染症ですから、航空会社や地上スタッフ、消防当局も含めて緊急体制を採らざるを得なくなるのは明らかです。
したがって、連行した当局よりも、悪質な冗談を言った人の方が偽計業務妨害罪に問われる可能性が高いでしょう。
他の乗客や航空機会社、地上スタッフその他大勢の迷惑になる行為ですので、悪質な冗談は控えましょう。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)