飛び降り自殺で他人に被害…責任はどこにいく?

高いビルやマンションから飛び降りる方法で自殺する人がいます。

このようなケースでは、ちょうど落下したところに人がいて、自殺者がその人にぶつかり、怪我をさせることがあります。過去には池袋のパルコから飛び降りた女性が道路を歩いていた男性に直撃し、死亡する事故が起きたこともあります。

さらに、自殺者がぶつかって、自動車や庭先の植木、お店の看板その他の備品を壊してしまうこともあります。

自殺者が死んでしまった場合、このようなケースで生じた損害は誰が責任をとることになるのでしょうか。

飛び込み

■原則的には相続人が責任を負う

一般的に、高いところから飛び降りる際には、眼下の歩行者に怪我を負わせたり、建物その他の器物を損壊しないようにすべき義務が課されていると考えられます。

そうであるにも関わらず、自殺者は、そのような注意を払うことは通常しないと考えられますので、飛び降り自殺の結果、歩行者に怪我をさせたり死亡させたり、その他建物や器物を壊してしまった場合には、過失によって人に損害を負わせたということができます。したがって、法的には、まず、自殺者本人に、発生した損害を賠償する責任が発生します(民法709条、710条)。

そして、その損害賠償責任は、自殺者の死亡と同時にその相続人が相続することとなります(民法882条)。相続の対象には、「権利」だけでなく「義務」も含まれるのです。相続人が複数いるケースでは、法律で定められている相続分にしたがって責任を負うこととなります(民法900条、901条)。

 

■相続放棄・限定承認という制度

しかし、相続放棄、限定承認という手続により、相続人は、賠償責任の全部又は一部を免れることができます。

相続放棄は、被相続人の相続を一切放棄するもので、これによって損害賠償責任を免れるだけではなく、残っている相続財産を手にすることもできなくなります(なお、被相続人が相続人を受取人として残した生命保険は相続財産ではなく、固有の財産となるので、相続放棄をしても受け取ることができます)。

これに対して、限定承認とは、相続によって得た財産の限度で債務を負うことを承認するという制度です。

例えば、飛び降り自殺をした人が、下にあった個人商店の備品を壊して200万円の損害を生じさせても、自身が相続により120万円の財産しか得られなければ、120万円の限度で賠償責任を負うことを承認することができる、というものです(ただ、複数の相続人がいる場合には、個々の相続人がそれぞれに限定承認をしてしまうと、その後の財産関係が複雑になってしまうため、相続人全員が共同する場合でなければ、限定承認をすることはできません(民法923条))。

飛び降り自殺の被害は、時に大きくなることもあり、特にぶつかられた方が死亡した場合の損害は、損害額が数千万円に上ることもあります。しかし、自殺者の家族がこのような多額の損害を賠償できる資力を持っていないことも少なくありません。このような場合には、不条理ではありますが、被害を受けた側が泣き寝入りせざる得ないでしょう。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)

スポンサードリンク
   
寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

コメント

コメント