高い家賃に加えて、忘れた頃に契約更新料の請求がきて家計を圧迫…更新料って払わないで住む方法は無いの?と、思うのも仕方ないかもしれません。
しかし、最近では「更新料は払わなくても良い」などの記事が人気を集め、裁判でも一部で払わなくても良いという判決が出されるなど、「払う必要が無い」との考え方が浸透し始めているようです。
しかし、実際はどうなのでしょうか?そもそも更新料とはどのようなものなのか、更新料の支払い義務が無いのは本当か?などの疑問について解説してみます。
●更新料とは何か
更新料とは賃貸借契約を更新するに当たり、賃借人が賃貸人に支払う金銭のことです。通常は、新賃料の1か月分とか2か月分と定められます。
関東では更新料が定められるのが一般的なようですが、全国的にはそれほど普及していないようです。
更新料に関し、特約があれば、特約に従います。
更新料の特約がないのに、賃貸人が慣習を理由に更新料を請求した事案があります。上記に述べたように、関東以外の地方ではあまり普及しておらず、慣習とまでは言えないというのが判例です。つまり、契約書に更新料の記載がなければ更新料を支払う必要はありません。
●契約書に記載されている場合は
更新料の特約が契約書に記載されている場合は、更新料を支払わないと契約を更新できません。このような特約が賃借人に不利益なので違法無効ではないかという裁判が各地で起きました。下級審の判断は分かれていましたが、最高裁が不当に高い更新料でなければ有効であると判断しました。
つまり、新賃料の1か月分とか2か月分程度の更新料であれば、有効です。
●法定更新の場合は更新料は払わなくて良い?
ところで、上記は、契約期間が満了し、更新契約を新たに締結する場合の話です。契約期間が満了しても、賃借人が引き続き住み続け、賃料を支払い続ければ、賃貸人側が正当事由を理由に更新拒絶をしないと、契約は更新されてしまいます。詳しい話は省略しますが、賃貸人側の正当事由が認められる可能性は非常に低いものです。
賃貸人側の正当事由が認められないと、そのまま契約は更新されてしまいます。これを法定更新と言います。法定更新は契約ではありませんので、更新料が発生しません。このことが広く周知されてきて、頭のよい賃借人は更新契約を締結せずに法定更新に持ち込み、更新料を支払わない事案が増えました。
賃貸人側もそれを防衛するために、「法定更新の場合も2年に1度更新料支払い義務が生じる」というような特約を契約書に書き込むようになりました。
「法定更新の場合は更新料を支払わなくてもよい」というような記事が散見されますが、それは特約がない場合だけですので、ご自身が締結した契約書をよく読んで特約の有無を確認して下さい。
法律とか契約の抜け穴を記事にするものがありますが、仮に抜け穴があってもその穴はすぐに塞がれてしまいます。抜け穴を探すよりもより条件のよい契約を探した方が良いと思います。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)