依然としてバカッターは消えていないようです。
今度は回転寿司店で店員がハサミを天ぷらにした画像をネットに流し話題となっています。バカッター事件の数々はネットだけではなく、テレビなどでも何度も取り上げられていますし、学校での指導やバイト先での注意喚起などもされ始めていると言いますが、また発生してしまいました。
炎上しても「何事も無かったように終わり」というわけもなく、中にはバカッターの行為によって閉店や破産に追い込まれ飲食店もあるようです。このようなとんでもない店員の行為で損害を被った場合、店側としてはたまったものではないでしょう。このような事が起きてしまった場合、店側としてはどのようなことができるのでしょうか。
●民事責任
当然のことながら、その店員を懲戒解雇にすることは可能でしょうが、それ以外に店側が取れる手段としては、民事上の処分と刑事上の処分の2つが考えられます。
民事上の処分というのは簡単に言うと損害賠償請求です。もちろん、ハサミやそれを揚げた油などは全て取り換える必要があるでしょうから、その費用は当然その店員に請求できます。
今回は客に健康被害は出ていないようですが、仮に客に健康被害が出たような場合は、店側は治療費や慰謝料を客に支払わなければなりませんので、その分も店員に請求できます。
仮に店を休業せざるを得なくなった場合は休業損害を請求できる可能性もありますし、万一閉店にでもなったら、数百万円から1,000万円以上の賠償を求められる可能性もあります。いずれにせよ、多額の賠償義務を負うと思って間違いないでしょう。
●刑事責任
次に刑事上の処分です。バカッターの行為がどのような犯罪にあたるかですが、考えられる犯罪は器物損壊罪、業務妨害罪、客に健康被害が生じた場合は重過失傷害などでしょう。
ハサミは油で揚げた時点で使えなくなるでしょうから器物損壊罪となります。ハサミを揚げた鍋も社会通念上使えないと評価すべきでしょうから、鍋に対しても器物損壊罪が成立するでしょう。器物損壊罪は3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となっており、決して罪は軽くありません。
また、店の業務を妨害していますから、業務妨害罪も成立します。業務妨害罪は3年以下の懲役または50万円以下の罰金となっており、こちらも罪は軽くありません。
万一ハサミの天ぷらを客が口にして、何かしらの健康被害が生じた場合には、重過失傷害罪が適用される場合があります。重過失傷害罪は5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となっており、かなり重い罪となっています。
バカッターは何の気なしにウケ狙いでやった行為が、実は法律上とんでもないペナルティーを科せられてしまうということをおそらく知らないものとおもわれます。しかしながら、もちろん知らなかったでは済まされません。絶対にこのような行為はやめるべきでしょう。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)
*画像は炎上したツイートのスクリーンショット