FC2動画の会員にわいせつな動画を配信したとして大阪のインターネット関連会社が捜索されました。
しかし、動画配信をしているのはこの会社だけではありません。更に無修正のアダルト動画ばかりを配信している会社もあるのに、なぜ他の会社は摘発されないの?という疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
今回はこの点について解説してみようと思います。
■各社報道
まず、FC2の件がどのような件で家宅捜索を受けているのかということを確認する必要があります。
NHK…「FC2動画にわいせつな動画を投稿したとして…」
日本経済新聞…「『FC2ライブ』を使った公然わいせつ事件に絡み…」
朝日新聞…「わいせつな動画をFC2の生中継サイト『FC2ライブ』で配信しているのを認識しながら、配信システムを提供した」
読売新聞…「インターネット上でわいせつ行為を生中継する機会を与えた」
毎日新聞…「性行為の生中継を手助けした」
産経新聞…「FC2のライブ配信サービスで…性行為の映像をライブ配信するのは手助けした疑い」
今回の家宅捜索は、性行為をライブ配信したのを手助け(=公然わいせつの幇助)したということが理由になっています(NHKだけ不正確なようです)。
■ポイントは「ライブ配信」という点
このポイントは「ライブ配信」をしていたという点にあります。
しばしば、「海外サーバだから捕まらない」という言説がまことしやかに聞かれます。
しかし、これは録画したものを配信している場合には当てはまる可能性がありますが(本当に問題ないかというと疑義があり、後述します。)、日本からライブ配信されている場合には当てはまりません。
刑法は「日本国内において罪を犯したすべての者に適用」されるので、公然わいせつに当たる行為の一部でも日本国内で行われていれば、公然わいせつ罪が適用されることになります。
性行為が日本で行われライブ配信がされていたので、この理由で配信をしていた男性などは摘発されたわけです。
対して、性行為を録画し終わった動画などを海外サーバにアップロードして、そこから配信している場合、配信自体が海外サーバから行われている以上、日本で公然わいせつに当たる行為が行われているとみることが難しいです。
そのため、無修正のアダルト動画を配信しているサイトは摘発されていないということになります。
■その他の動画配信サイトも違法の可能性あり
海外から無修正のアダルト動画を配信しているサイトが違法ではないのかというと、実はそういうわけでもありません。
先ほど、日本で公然わいせつに当たる行為が行われているとみることが難しいと書きましたが、すくなくともわいせつ物の陳列という結果が日本国内で生じています。
したがって、海外にあるサーバを差し押さえることができるのかといった実務上の問題が出てくるものの、摘発しようと思えばわいせつ物公然陳列罪などで法的には摘発が可能なはずです。
そのようなサイトも、実際には日本人が運営しているのではないかと思います。そのため、お金の流れを調べることで、今回のFC2のように「幇助した」ということで摘発を受ける業者も、ひょっとしたら出てくるかもしれません。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*画像は「FC2ライブ」のスクリーンショットを加工したもの