69年ぶりにデング熱が日本で確認され、代々木公園などの公園が各地で閉鎖され蚊の駆除が行われるなど波紋を広げています。
そして、西アフリカではエボラ出血熱が大流行し、約2,500人が死亡するなどの猛威をふるい、各地で病原体による被害が発生しています。
エボラ出血熱に関しては、日本に上陸したら大きな被害が発生すると予想され、各空港などでは対策をとっているようです。しかし、くぐり抜けて日本に持ち込んでしまうということがあれば多くの人を死に至らせる可能性があります。
もし、感染源であるウィルスを日本に持ち込んでしまったら、その人は責任を問われるのでしょうか?これについては、一概には言えず、色んな場合分けをして考えていかなければなりません。
(1)そもそもそのウィルスの存在を知らないで持ち帰った場合
この場合には、そもそも海外においてウィルスを持ち帰らないように注意しようにも不可能な状況ですので、持ち帰る行為が違法になることはありません。
(2)ある程度の知識を持っていて、もしかしたらウィルスを保有しているかも、、、と思いながら持ち帰った場合
この場合には、そのウィルスが日本において伝播しないように注意しなければならない義務が法律上課せられることになりますので、もしこの義務を怠り、誰かにうつしてしまったということになりますと、過失傷害罪にあたり、刑事、民事ともに責任を負わなければならなくなるでしょう。
(3)ウィルスについての知識があり、自らがウィルスを保有していることを認識しながら、かつ、日本に持ち込み、うつしてやろうと考えていた場合
この場合には、傷害罪が成立します。特定の人間を病気にさせてやろうと思っていなくても、誰かにうつして病気にさせてやろうと思い、うつるような振る舞いをし、誰かが実際に病気になったという因果関係が証明できれば、故意による傷害罪が成立し、刑事、民事共に責任を負うことになるでしょう。
以上のように、ケースごとに問われる責任は変わってきます。場合によっては刑事、民事ともに責任を負う可能性がありますので、少しでも感染の疑いがある場合はしっかり申告し、病院などで診断してもらうことが大切になります。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)