ニコニコ生放送やFC2 ライブなどのライブストリーミングサービスでは、有料で配信している番組や有料会員優先で放送している番組が多くあります。
しかし、有料で配信している番組を、無関係の第三者がそのままリアルタイムで無料配信していたり(ミラー配信)、録画して無料配信している人もいるようです。
このような行為は、有料配信をしている人にとっては営業妨害になるわけですが、法的にはどのような問題があるでしょうか。
■ライブストリーミングの番組は「著作権隣接権」で保護される
一般的に、ある番組がビデオやDVDなどに録画されている場合、その録画されたものについては「映画の著作物」という扱いを受けます。
しかし、ライブストリーミングで配信している番組は、いわば「生番組」です。映画の著作物として保護されるためには、「物に固定」、つまりビデオやDVDなどに録画されることが必要とされます(著作権法2条3項)。
そのため、生番組については映画の著作物として保護されないということになります。(*ただし、放送と同時に録画している場合には、「映画の著作物」に当たるとした裁判例はあります。)
では、生番組で録画されていないと保護されないのか?というと、そういうわけではありません。
番組の中で話をしていたり、何かの芸をしたりしているわけなので、それについては「実演家」として著作隣接権(実演家権)が発生しています。
具体的には、実演を録音・録画したり、コピーを許諾する権利(録音権、録画権)や、放送やネットにアップするための放送権・有線放送権、送信可能化権などの権利を持っています。
そのため、ライブストリーミングについては、著作隣接権によって保護されるということになります。
ちなみに、権利が発生しているかどうかというのは、有料なのか無料なのかは関係がありません。
■配信は録音権、録画権、送信可能化権を侵害
インターネットで配信をすることは、法的には「放送」ではなく、「公衆送信」といいます。著作権には公衆送信権があるのですが、著作隣接権には公衆送信権はなく、代わりに「送信可能化権」という権利があります。
送信可能化権とは、簡単にいえば実演の録音・録画データをネットにアップロードすることです。
リアルタイムでミラー配信している場合は、常にデータを録音・録画し、そのデータをネットに逐次アップしているという状態になります。そのため、録音権、録画権、送信可能化権を侵害しているということになります。
録画して配信する場合は、いったんデータを全て保存しているわけで、その時点で録音権、録画権を侵害しているということになり、ネットにアップした時点で送信可能化権を侵害していることになります。
■罰則は重い上に賠償額も多額になるリスク
著作権ではなく、著作「隣接権」だから著作権侵害よりも罪は軽いだろうと考えるのは、甘いです。著作権侵害と著作隣接権侵害の罪は同じで、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金とされています。
また、侵害を受ければ、その侵害を損害として、賠償を求めることができます。そして、侵害の行為がなければ販売することができた数に相当する利益額を賠償額として推定するとされてます
特に有料配信されている番組をミラー配信・録画配信するような場合には、高額になっていく可能性があります。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)