静かな子供でも 「子供お断り」の店に入る事って出来ないの?

最近、「子供お断り」などとして、主に、未就学児同伴の入店を拒否する飲食店が増えてきているといわれています。

その理由は、静かにゆったりとした雰囲気で食事を提供することを目的としており、こどもが騒ぐとその雰囲気が壊れるからといったことや、子供が騒ぐ声がうるさいという他の客からのクレームを回避するところにあると考えられます。

日本では、幼いこどもを預ける先はなかなかないため、このような店が増えていくと、幼児を抱える母親たちが「ママ友」同士で気軽に食事をすることも難しくなるということで、SNS上で不満を訴える書き込みも少なからず見受けられます。

そこで、今回は、このような「子供お断り」といった入店条件の法的問題についてお話したいと思います。

ご飯

■飲食店と客の間の法律関係

飲食店に行って、客が飲食の提供を受けて代金を支払う関係も契約関係にあります。まず、飲食を提供する店側が、メニューや代金などのサービス内容を提示します(店の前に簡単なメニュー表示がなされているのはその趣旨といえるでしょう)。

その内容に客が納得してサービスや飲食の提供を受けたいという意思表示をして、これを店側が受け入れれば、そこで契約が成立します。客は、提供されたサービスの内容に応じて、契約上の義務として代金を支払うこととなります。

契約を締結しようとする当事者は双方とも、合意に至る上での条件を提示することができます。条件は、社会常識から考えてよほど不合理なものでない限りは、原則として有効なものと考えられます。そして、他方がその条件では納得がいかないのであれば、契約が成立しないということになります。

 

■「子供お断り」は有効か

飲食店側がつける「子供お断り」という条件は、社会常識から考えてよほど不合理とまではいえないと考えられます。したがって、条件自体は有効といわざるをえないでしょう。

客側が「うちの子は静かです」と言っても、果たして本当に静かかどうかは店側にはわかりませんし、一度こどもを入店させたという実績を作ってしまえば、他のこども連れの客から入店を迫られたときに断りきれないという不都合も生じるでしょう。ですから、一律にこどもの入店を拒否することは、やはり不合理とはいえないと考えられます(ただし、対象年齢を明示してお断りの範囲を明らかにすることは必要と思われます)。

 

■一律「子供お断り」しか方法がないのか?

このような条件をつけること自体は法的に問題がないとしても、店側と客側のトラブルを招く要因になりかねませんし、「こどもを連れて食事をしたい」というニーズと「静かな場所で食事をしたい」というニーズが両立できれば、双方にとってメリットが高いのではないかとも思えます。

法律論からは離れますし、また、現実には難しいのかもしれませんが、例えば、「こども連れ入店OK」の時間帯を作るとか、店のスペースに余裕があれば、こども連れを予約制にして個室を案内するなど、バランスのとれた解決が理想的ではないかと個人的には考えます。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)

寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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