妻にミニスカを履かせ、その姿を盗撮した人を夫が恐喝するという事件が大阪で発生しました。
「盗撮した人は警察に言わないと思った」と供述しているという事ですが、今回は被害届が出されたことにより発覚しました。
そして、この事件では「盗撮した人が無罪」という点にも注目が集まっています。盗撮犯といえば罰せられて当然のような気がするかもしれませんが、なぜ、今回は無罪となったのでしょうか。
■盗撮が犯罪となる要件
盗撮行為は、全国一律の刑法ではなく、各都道府県が独自に迷惑防止条例を設けて処罰しています。
そのため、条例により法定刑や犯罪となる要件・条文の文言が若干異なりますが、基本的には盗撮行為が「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」(東京都迷惑防止条例の場合)であることが必要です。
今回、女性は、示談金を恐喝する目的でわざと盗撮させていたということですから、当然、「人を著しく羞恥させ」るものでもなければ、「人に不安を覚えさせるような行為」ともいえません。
したがって、盗撮行為は迷惑防止条例違反とはされなかったのです。
なお、刑法学の分野では、犯罪構成要件に該当していても、被害者の承諾がある場合には、犯罪は成立しないという考え方が存在します。
女性はわざと盗撮させていたので、被害者の承諾があるために犯罪(迷惑防止条例違反)とならないと考えることも可能です。
■意図的に露出している人の盗撮は違法
今回と違って、盗撮させる意図まではなく、単にセクシーさ?をアピールするために露出度の高い服を着ている女性を盗撮した場合は、原則として迷惑防止条例違反の違法な盗撮となるでしょう。
露出度の高い服は、通常、盗撮させるためのものではなく、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」の要件に欠くところはないと考えられるからです。
盗撮までは意図していないので、被害者の承諾の理論も適用されません。
今回の事件は、女性が自ら盗撮させる意図であったことが重要なポイントで、特殊な事例です。
■痴漢行為の場合も同じ
痴漢をしてもらいたい人(掲示板などがあるようです)に対して電車内で痴漢行為をすることも、真に女性の同意がある場合には、迷惑防止条例違反とはなりません。
痴漢行為についても、盗撮と同様、迷惑防止条例で「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」(東京都迷惑防止条例の場合)であることが犯罪要件とされているからです。
ただし、以前なりすまし事件があったように、「女性の同意があると思い込んで痴漢したところ、実際には第三者が女性になりすましてネットで痴漢の同意をしていた」ようなケースでは、犯罪の故意がなかったことを立証することは相当に困難です。