街中を歩いていたら「美味しい果物ありますよ!」「今日採れたブドウ買いませんか?」などと、突然若者が声をかけてきて、フルーツを買ってくれと紹介するケースが相次いでいます。
これだけでは問題ないのですが、中には酔客を狙ったり、割高で売ったりするなどの問題行為も発生しているようです。もし自分が誤って購入してしまったら、返品したいと思う人も多いのではないでしょうか。
この様なケースでクーリングオフ制度は適用できるのでしょうか。そもそも連絡先の分からないフルーツ売りに対して返金可能なのかなど、解説してみます。
■クーリングオフ制度の概要
すでにご存知の方も多いと思いますが、クーリングオフとは、消費者が訪問販売などの不意打ち的な取引で商品を購入したり、マルチ商法などの複雑でリスクが高い取引で契約した場合に、一定期間(訪問販売は8日間)であれば無条件で、一方的に契約を解除できる制度です。
訪問販売の要件は、特定商取引法で定義されていますが、条文は少し難解です。
掻い摘んで要約すると、業者の店舗以外の場所で、商品を購入したり、店舗以外の場所で勧誘を受けて店舗に行き購入した場合が訪問販売にあたります。
業者が自宅に来た場合だけでなく、路上でフルーツを売りつけられることも「店舗以外の場所」にあたりますので、訪問販売として、原則、クーリングオフによる契約撤回・返金請求ができます。
■現金3,000円未満はクーリングオフの対象外
ただし、訪問販売であっても、3,000円未満の現金取引や使用または消費すると商品価値がほとんどなくなってしまう化粧品や健康食品などの政令指定消耗品で使用または消費したものについては、クーリング・オフができません。
フルーツ売りの多くは、3,000円以下の低額だと思われますので、実際にはクーリングオフの対象外となるケースが多いでしょう。
■詐欺になる?
タダ同然で仕入れたフルーツを、高級品と偽って売りつけていたとしたら、商品価値に関する消費者の判断を誤らせる欺罔行為と評価することもでき、3,000円未満でも、詐欺取消に基づき、返金を求めることは可能です。
■回収は困難
以上のように、3,000円以上の場合はクーリングオフ、3,000円未満の場合は、詐欺による契約取消をして返金を求めることが可能ですが、実際には、売り子の身元も所属する会社も不明であることが多く、一度代金を払ってしまうと、取り戻すのは極めて難しいと予想されます。
被害額が少ないと裁判をしたり、弁護士に依頼することも費用倒れとなり、泣き寝入りの憂き目に遭うおそれもあります。
詐欺の立証もハードルが高いので、被害額が高額で被害者も多数いる場合でない限り、被害届を出しても警察が動いてくれる可能性も低いでしょう。
消費者生活センターへの相談も増加傾向にあるようですが、回収までは手伝ってくれません。事後的な救済は困難であることを認識し、被害に遭わないよう注意して下さい。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)