「ブラック企業」という言葉が市民権を得て、働き方に対する関心も高まってきています。
しかし、未だにパワハラや長時間労働など、様々な酷い労働環境が話題にのぼり、自殺者が出たり病気になったり、ストライキが行われたり…依然として問題は蔓延っています。
今回は、仕事が原因でうつ病になった時、どのような給付金が貰えるのか、どうすれば良いのかについて説明したいと思います。
■休職と療養
医師に診察してもらい、就労不能ないし就労困難で療養を要する旨の診断書を出してもらい、これを会社に提出して休ませてもらい、療養に専念しましょう。
うつ病のまま仕事を続けても病状を悪化させるだけです。
■労災保険給付の請求
労働者災害補償保険の適用を受けられないか検討して、受けられる見込みがあれば労働基準監督署長に労災保険給付の請求をしましょう。請求書は、労働基準監督署に備え付けてあります。
労働者災害補償保険は、労働者災害補償保険法に基づき、業務災害や通勤災害にあった労働者(またはその遺族)に、保険給付を支給する国の制度です。
要するに、仕事が原因で労働者が病気になった場合、国から保険給付が支給されるわけです。
労働者災害補償保険の適用が認められれば、治療費が0円になるだけでなく、休業補償給付として平均給与の80%の支給を受けることができます。
ただし、労働者災害補償保険の適用を認めてもらうためには、労働基準監督署の労災認定を受ける必要があり、6ヶ月以上かかるようです。
また、うつ病のような精神疾患の場合、発病前の6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷があったと認定してもらう必要があり、申請しても3件に1件程度しか認められていないようです。
申請したとして労働者災害補償保険の適用を認めてもらえそうか、弁護士や社会保険労務士に相談してみましょう。
■傷病手当金給付の請求
傷病手当金は、健康保険法に基づき、被保険者(=労働者)が病気や怪我で会社を休まざるを得なくなり十分な給与を受領できない場合に支給されます。
健康保険の場合、治療費は3割負担、傷病手当金の支給額は平均給与の3分の2支給です。
労災認定には時間がかかりますので、可能であれば、傷病手当金の支給を受けながら労災給付を請求したいところです。
労災給付が一時金として支給されたら、傷病手当金を一括で返済することになります。
ただ、健康保険組合の中には、こうした傷病手当金の支給を認めてくれないところもあるようです。
■労災の証拠資料の収集
先述したように、うつ病のような精神疾患の場合、発病前の6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷があったと認定してもらう必要があります。
認定してもらうための証拠資料を集めましょう。
パワハラやセクハラが原因の場合には、会話を録音したり、メールのやり取りを残したり、日記をつけたりして、証拠に残しましょう。
加重労働が原因の場合には、タイムカードや業務日誌の写し等をコピーして証拠に残しましょう。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)