「ハムスター釣り」が波紋…しかし動物愛護法で罰せられない理由とは

大阪の夏祭りに「ハムスター釣り」の露店が現れ、インターネット上で「動物虐待」と物議を醸しているが、果たして、法律上、「ハムスター釣り」が「動物虐待」に当たるのか?

もし「ハムスター釣り」が「動物虐待」に当たるとするならば、「金魚すくい」も「動物虐待」に当たるのではないか、と次々と疑問が湧いてくるので「ハムスター釣り」が「動物虐待」に当たるのか考えてみたいと思います。

お祭り●動物愛護法とは何か

まず、「動物虐待」といって思い浮かべるのが「動物愛護法」です。

この法律はどういう目的で作られたかというと、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識して、みだりに動物を虐待することのないようにする、また、人間と動物との共生社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うということを目的としています。

そして、広く国民の間に動物愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるため、毎年9月20日から26日までを動物愛護週間とし、これにふさわしい行事を実施しています。

この「動物愛護法」では、「動物愛護」を図るため、「動物虐待」を禁止しています。

具体的には、

・愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者
→2年以下の懲役または200万円以下の罰金

・愛護動物に対し、みだりにえさや水を与えずに衰弱させるなど虐待を行った者
→100万円以下の罰金

・愛護動物を遺棄した者
→100万円以下の罰金

という罰則があります。

ここにいう「愛護動物」とは、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、その他人が飼っている哺乳類、鳥類、爬虫類をいいます。

従って、「ハムスター」は哺乳類なので「愛護動物」にあたりますが、「金魚」は魚類なので「愛護動物」にはあたりません。

 

●虐待とは何をさすか

また、「動物虐待」とは、動物を不必要に苦しめる行為のことをいいますので、正当な理由ないのに動物を殺したり傷つけたりする積極的な行為は「動物虐待」にあたります。

また、必要な世話を怠ったり、ケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も「動物虐待」に含まれます。

なお、食用にしたり、治る見込みのない病気やけがで動物がひどく苦しんでいるときなど、正当な理由で動物を殺すことは「動物虐待」にはあたりません。

ただ、その場合であってもできる限り苦痛を与えない方法をとらなければなりません。

「ハムスター釣り」は、ハムスターを殺したり傷つけるわけでもなく、ハムスターに餌をあげないというわけでもないので、「動物愛護法」にいうところの「動物虐待」にはあたりません。

道義的に良いか悪いかは別として、法律上は「動物虐待」には「あたらない」こととなります。

 

*著者:弁護士 桐生貴央(広尾総合法律事務所。「人のために 正しく 仲良く 元気良く」「凍てついた心を溶かす春の太陽」宜しくお願いします。)

桐生 貴央 きりゅうたかお

広尾総合法律事務所

東京都港区南麻布5丁目15番25号 広尾六幸館301(主事務所)

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