2014年7月29日、 茨城県のスーパーで、「無料」の氷12キロを盗んだとして、男が窃盗の疑いで逮捕されました。
買い物客は氷を持ち帰る事が出来るシステムになっていましたが、逮捕された男は持参した巨大な袋に12キロの氷を持って帰ろうとし、店長が警察に通報しました。今までもこの男に対して店長は注意をしていたため、通報したとの事です。
ネットでは「無料のものを盗んで窃盗?」という声が多くあがっており、不思議に思っている方も多いようです。
今回は無料でも窃盗になる理由について説明してみたいと思います。
●窃盗とは何か
窃盗罪(刑法235条)は、他人の物を所有者に無断で持ち出すことで成立します。所有者が持ち出すことを許可していれば、窃盗罪になりません。
この記事を読むと、スーパーの買い物客が氷を持ち出すこと(持ち帰ること)は、スーパーが許可していましたので、窃盗罪にはなりません。しかし、買い物客以外の者が持ち出すこと(持ち帰ること)は、スーパーが許可していませんでしたので、窃盗罪になります。
しかし、持ち帰った人は、無料だから誰が持ち帰っても窃盗罪にならないと誤解していました。このような誤解を「錯誤」と言います。錯誤があると犯罪にならない場合があります。
しかし、記事を読む限り、この人はスーパーの店長からやめて欲しいと言われているのにそれを無視していますから、このような誤解があっても窃盗罪になります。
補足ですが、窃盗罪が成立するのに盗まれる物の経済的価値は不要です。たとえゴミのような物であっても、所有者が持ち出しを許可していなければ、窃盗罪になります。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)