自殺したい者同士が集まり、時に自殺するにまで至る「自殺サイト」。
度々メディアなどに問題性を指摘されながらも無くなる事はなく、自殺者を生み出してしまうにも関わらず存在し続けています。
「なぜ自殺サイトがなくならないのか」この理由に「存在が罪にならない」という問題があります。
自殺者を生む事は罪にならないのか、そもそも自殺とは何かを含めて検証してみたいと思います。
■自殺とは何か
殺人罪を規定する刑法199条の「人を殺した者」には、行為者は含まれません。したがって、現行法上、自殺は不可罰です。
もっとも、他人を教唆したり、幇助したりして自殺させた場合には、自殺関与罪が成立します(刑法202条前段)。
なお、「教唆」とは、他人を唆して犯罪を実行する決意を生じさせることをいい、「幇助」とは、正犯者でない者が、正犯の実行を援助し、容易ならしめることをいいます。
■「自殺サイト」の存在が自殺関与罪を構成するか
「自殺サイト」と一言で言っても、様々な種類のものが存在します。
まず、首つりや飛び込みなど、様々な自殺の方法が列挙されているタイプの「自殺サイト」について検討します。
この場合、自殺サイト運営者である幇助者と実際に自殺をした被幇助者との間において、何らの意思の連絡もなされていないのが通常であると考えられます。このような片面的な幇助の場合、自殺に必要な道具を貸すなどの物理的な援助がない限り、幇助犯は成立しないと一般的に考えられています。
したがって、この場合、自殺幇助罪が成立すると考えるのは難しいかもしれません。
次に、サイト内においてサイト運営者と連絡を取ることができ、自殺の詳細な方法等を問い合わせることができる「自殺サイト」について検討します。
この場合、自殺サイト運営者は、相手が自殺を考えていることを知った上で、自殺を容易にさせるためのアドバイスをしていると考えられるため、自殺幇助罪が成立する可能性が高いといえます。
また、自殺サイト運営者のアドバイスによって自殺者が自殺の意思を最終的に確定させたといえる場合には、自殺教唆犯が成立する可能性もあります。
■「自殺したい者同士が交流する掲示板」について
自殺したい者同士が集まり、共に練炭自殺を行うなどの事件が報道されることがあります。
この点については、平成17年6月13日富山地裁の判決が参考になります。
富山地裁は、「自殺したい者同士が交流する掲示板」で出会った自殺志願者数名が集団自殺をしようと企て、そのうちの1名を車内の練炭による一酸化炭素中毒により死亡させた事件について、集団自殺を企てた者に自殺幇助罪が成立するとして、懲役2年、執行猶予3年の判決を下しました。
この判決において、「自殺したい者同士が交流する掲示板」のサイト運営者に何らかの犯罪が成立するかの判断はなされておりません。
しかし、場合によっては、上記のサイト運営者に自殺幇助罪が成立する可能性もあると考えられます。
サイト運営者が、(1)現に行われようとしている具体的な自殺を認識、認容しながら、自殺サイトの公開を行い、かつ、(2)その公開に当たり、例外的とはいえない範囲の者が自殺サイトを自殺に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたと認められる場合には、サイト運営者に自殺幇助罪が成立すると考えられます(最決平成23年12月19日参照)。
■さいごに
近年、日本において自殺による死亡者数が高い水準で推移しており、年間3万人を超える人が自殺により命を落としています。このような状況において、自殺の防止を図るべく、平成18年に自殺対策基本法が施行されました。
自殺の背景には、様々な社会的な要因があることも否定できない以上、自殺対策は、社会的な取り組みとして実施する必要があるでしょう。
*著者:弁護士 鈴木翔太(弁護士法人 鈴木総合法律事務所)