ほとんど報じられる事はなく、適応される事例も稀にしかない「決闘罪」を知っていますか?
適応される事も殆ど無かった為「過去の遺物」とまで言われていました。
今回は、傷害罪や暴行罪ではない決闘罪とはどんな法律なのか解説してみたいと思います。
■決闘罪とは
「決闘罪ニ関スル件」という法律において、決闘を行った者は、2年以上5年以下の懲役に処するとされています。
刑法の条文上は、「決闘」の定義について定められていませんが、判例では、「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもって争闘する行為」とされています。
ここでは、一定の慣習や規則に従うこと、証人や介添人が立ち会うこと、名誉の回復を目的とすること、1対1で行われることなどは、犯罪の要件とされていません。
「決闘罪」のほかにも、「決闘罪ニ関スル件」という法律において、「決闘挑応罪(決闘を挑む罪・それに応じる罪)」、「決闘立会罪」、「決闘場所提供罪」などが定められています。
■決闘罪が作られた背景、決闘罪の立証趣旨
明治21年、当時新聞記者であった犬養毅氏に対し決闘が申し込まれ、犬養氏が拒絶するという事件が報道され話題となり、それ以降、決闘申込事件が続出しました。このような背景により、明治22年、特別法として「決闘罪ニ関スル件」が制定されたといわれています。
また、決闘罪は、江戸時代からの果たし合いや仇討ちを防止するために定められたといわれています。
■実際の適用事例
平成17年の検察の統計によれば、決闘罪で受理された者は34名とされています。このように、決闘罪で書類送検される例は多くありませんが、全くないわけではありません。
平成23年、京都府内の中学生が集団で喧嘩をし、京都府警少年課と八幡署は、この乱闘騒ぎに参加した京都市伏見区と八幡市の14~15歳の中学生ら25人と、この対決を見届けた26歳の男を決闘罪で書類送検しています。
また、平成21年に、大阪府警少年課と西堺署が、中学生12人が6対6に分かれ殴り合いをしたとして、決闘容疑などで堺市立中学校2校の14歳の生徒4人を書類送検し、当時13歳だった8人を同罪の非行事実で児童相談所に通告するという事件がありました。
また、平成18年に東京都多摩川河川敷で中学生6人、平成22年には埼玉県川口市の綾瀬川河川敷で3人が乱闘絡みで決闘罪が適用され、それぞれ書類送検されています。
■さいごに
「決闘罪」の適用事例は多くないため、「決闘罪」や「決闘罪ニ関スル件」という法律を耳にすることは少ないと思います。
しかし、明治22年に「決闘罪ニ関スル件」が制定されてから現在までの間、「決闘罪ニ関スル件」という法律が存続し廃止されていないのは、上記のような適用事例が少ないながらあるからなのでしょう。
*著者:弁護士 鈴木翔太(弁護士法人 鈴木総合法律事務所)