家電量販店やスーパー、ネットショッピングなど、購入時にポイントが購入金額の1%~3%ほど付くお店や通販サイトがあります。
会社の備品などを個人のポイントカードやアカウントで購入し、付いたポイントを使用することは業務上横領などに当たるのでしょうか?個人が会社の備品の購入という業務に乗じてポイントという利益を得ているため問題となります。
まず、結論から述べますと、異論もあると思いますが、業務上横領には当たらないと考えます。
以下、業務上横領に当たらないと考える理由について、説明いたします。
■「ポイント」の法的位置付け
ポイントにも色々あり、一定ポイント貯まると景品と交換できるもの、値引き(割引)に利用できるもの、商品券と交換できるもの、ポイント同士を交換できるもの、「1ポイント→1円分に交換」のように現金の代わりに利用できるもの等、様々です。
ポイントシステム利用の目的も、顧客の囲い込み、優良固定客の維持、販売戦略を練るための顧客データの収集等、様々です。
ただし、ポイントをもらうためには、ポイントカードに印鑑を押してもらう、ポイントカードに電子データという形で打ち込んでもらう、アカウントを利用して業者のサイトにアクセスし所定の手続を経て購入する、といった業者が指定する方法を利用しなければなりません。
そこで、ポイントは、購入者が特定の方法を使って商品やサービスを購入する際に付与される一定の利益ということができるかと考えます。
■業務上横領の成否
業務上横領が成立するためには、「業務上自己の占有する他人の物を横領した」(刑法253条)と言えなければなりません。
横領の対象が「他人の」物である必要があるわけです。
ポイントは、購入者が特定の方法を使って商品やサービスを購入した場合にもらえるものであることからすると、ポイントカードやアカウントを所持し利用した者に付与されるものと考えられます。
そうすると、会社の従業員が会社の備品の購入に際し自身のアカウントを利用して購入しポイントを得た場合、そのポイントは、アカウントの所持し利用した従業員のものであり、「他人(会社)の」物を横領したとは言えないのではないかと考えられます。
そこで、ポイントは「他人の」物と言えず、業務上横領に当たらないと考えるわけです。
なお、従業員が備品購入のためのお金を預かり、既に取得していた自身のポイントを利用して安く購入し、残ったお金を費消した場合は、「他人(会社)の」お金を横領したと言えますので業務上横領が成立すると考えます。
いずれにしても会社の従業員が会社の了承を得ずに仕事に乗じて個人的に利得を得るのは会社に対する裏切り行為と言えます。
会社の従業員としては、横領が成立しようがしまいが、自身のアカウントを利用して購入しポイントを自分のものにしていいかどうか、その場合のポイントの扱いについて事前に話をすべきだと思います。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)