先ごろ、とあるハンバーガーショップで、客のひとりが「広告通りに作って」と頼んだところ、ほぼ広告通りに店員がハンバーガーを作った動画がネット上で話題を集めていました。
実際のところ、商品として出されるハンバーガーは、TVCMやポスターなどの広告と比べると、ボリュームやパテの厚み、野菜の瑞々しさが格段に落ちます。そのため、買った人の中にはがっかりする人もいるかもしれません。
今回は、このような誇大ともいえる映像や画像の表現について法的な問題はないのか、お話しします。
■見た目の誇張だけなら法的には問題なし
実際の商品よりも、広告の写真や映像の方が、ボリュームが多かったり、パテが厚かったりというだけでは、法的な問題には全くならないといっても過言ではありません。
そもそも、1つ1つの商品を広告の写真どおりに作るのは不可能です。また、あくまで広告と実際との間で異なるのは「印象」といわざるを得ません。
食べ物なのですから、肝心なのはレシピや味であって、そこに問題がないのであれば、広告と見た目の印象が違うものを出すことに法的な問題は生じません。
ハンバーガーに限らず、広告と実際の商品の見た目が全く異なるということは少なくありません。消費者の方も見た目の違いについては承知しているのがふつうであり、この点から考えても問題は発生しないでしょう。
なお、以前、おせち料理のネット販売について、予約の際のサイトの画像と実際に納品された者の見た目が異なって問題になっているというニュースが流れたことがありました。
この問題は、単に見た目が異なっていただけではなく、料理自体が宣伝と全く違っており、金額に見合わない商品となっていたことから発生したもので、全く別な問題になります。
■問題になるケース
食品の広告という場面で問題となりうるのは「不当景品類及び不当表示防止法」違反です。
ハンバーガーについて考えると、例えば、実際の商品にはパテが2枚しか入っていないのに、広告では3枚入っていたような場合、外国産牛を使用したパテであるにもかかわらず、国産牛であると広告に表示したような場合、遺伝子組み換え食品が含まれているにもかかわらず、含まれていないと表示した場合などは違法になりうるでしょう。
先ほど挙げたおせち料理の件も、故意に実際に納品する物とは異なる画像で広告をしていたのであれば、この法律に違反していた可能性もあります。
大切なのは「見た目の印象」の問題ではない、ということです。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)