先日、ファミリーレストラン「デニーズ」のロゴに似た「デリーズ」というロゴを使ってデリヘル店を経営していた男が不正競争防止法違反の疑いで逮捕されたそうです。
そこで、今回は、不正競争防止法がどのような法律なのか、ロゴや店名を真似ることがなぜ問題なのかについて、解説してみたいと思います。
■不正競争防止法
不正競争防止法は、商売を営む者が公正に競争できるようにして、国民経済が健全に発展していくようにするための法律です(同法1条)。
憲法22条1項は、国民の営業の自由を保障しています。
しかし、いくら営業の自由が認められるからといって、他社の有名なロゴを真似たり、他人の商品を真似た商品を販売したり、他社の営業機密を盗み取ったりする行為等は放置すべきではありません。
これらの行為を放置してしまうと、真っ当な事業者は本来得られるはずの利益を得られず、新商品開発のモチベーションもなくなり、国民経済は発展せず停滞してしまいます。
そこで、不正競争防止法は、こうした行為を「不正競争」として類型化して、不正競争によって営業上の利益を侵害された者に差止請求権(同法3条)、損害賠償請求(同法4条)等を認め、また不正競争行為を行った者に刑事罰を科している(同法21条以下)わけです。
■ロゴや店名を真似ることがなぜ問題なのか
不正競争防止法は、自分の商品やサービスの表示として他人の著名な商品やサービスの表示を使用することを「不正競争」の一つとしています(同法2条1項2号)。
いわゆる著名な商品・サービスの表示への「ただ乗り」です。
「デニーズ」のロゴを真似る場合もこれに当たります。
ロゴや店名を真似た方は著名なロゴや店名を使用することによって売り上げを伸ばすことができるかも知れませんが、真似された方は、同じ商品・サービスであれば売り上げが減りかねないですし、同じ商売・サービスでなくても築き上げた信用が低下させられかねません。
そこで、ロゴや店名を真似ることが「不正競争」の一つとされているわけです。
■「不正競争」に当たる場合
「不正競争」に当たる場合、不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、不正競争を行った者に対して、侵害の差止めを求めたり(同法3条)、損害の賠償を求めたり(同法4条)、不正競争を行った者を告訴して刑罰を受けてもらうこともできます。
ロゴや店名を真似た場合、5年以下の懲役や500万円以下の罰金といった刑罰を科せられることがあります(同法21条2項2号)。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*画像は長野県警発表のもの