数日前に栃木県を訪れた天皇皇后両陛下を写真撮影した人がその写真をTwitterに掲載しました。
両陛下が笑顔で手を振る印象的な一枚であることなどから「なぜか単純に心を打たれて感動する。」といった反応が見られる一方で、「勝手に掲載するな。」との声も聞かれます。ツイートは既に削除され、投稿者のアカウントは凍結されています。
今回は、このケースを参考に、街で見かけた有名人の写真を勝手にネット掲載することの是非を、法律的に見ていきたいと思います。
写真の被写体が有名人の場合は、大きく分けて2つの問題があります。
■プライバシー権の問題
一つは、単純にプライバシー権の問題。どこで何をしていようが、有名人だからと言ってばらして良いということにはなりません。
もしかしたら、お忍びで出かけているかも知れません。その被写体の方に事前に「許諾」をもらってください。
これは掲載先が一部の友人までの、例えばFacebookであったとしても同様です。「Facebookのタイムラインにアップしても良いですか?」と必ず聞いてみましょう。これが聞けないのであれば、掲載すべきではありません。
■ パブリシティ権
もう一つは、有名人の場合には、我々一般人と違って、その写真(肖像)そのものに顧客吸引力、つまり、宣伝広告になる等商業的価値があります。
このような顧客吸引力を排他的に利用する権利を「パブリシティ権」といい、これを侵すと、高額な損害賠償請求を起こされる場合があります。
皆さんも、芸能人と一緒に撮った写真をFacebookのタイムラインに載せた場合(もちろん、事前の「許諾」をもらいますが)、いいね!の数が半端なく伸びた経験をお持ちでしょう。あれだけのいいね!数を稼ごうと思ったら、本来はお金を払って広告を打たなければならないのです。
結局、町で見かけたとはいえ、被写体が有名人の場合には、事前に許諾を得なければ、例え自分のFacebookとはいえ、その掲載は許されない、ということになりますね。
安易なネット掲載はトラブルのもと。基本的な法知識を身につけて、ネットライフを気持ちよく過ごしましょう。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)