現在、一番注目を浴びているのは、子供が本当に自分の子供であるかどうかを確かめるためのDNA鑑定です。
子供がどうも自分に似ていないと思っている父親が、ひょっとしたら別の男との間にできた子供ではないかと疑いを持ってしまったら、おそらく心中穏やかでいられないでしょう。
そのような場合に、父親側が子供と親子関係があるかを確かめるためにDNA鑑定が利用されます。
皮肉なことに、現在は鑑定費用もかなり安くなってきていますし、方法も簡単、正確性も99.9%まで高まってきていますので、DNA鑑定をしやすい状況になっています。今後ますます鑑定をするケースは増えていくのではないでしょうか。
■一般的なケース
さて、鑑定したところ、夫の子であるという結果が出れば全く問題ないのですが、夫の子でないという結果が出たら悲惨なことになります。妻の不貞が証明されたわけですから、当然離婚事由に該当しますし、夫は妻に対して慰謝料を請求することもできます。夫は養育費を支払う義務もありません。
妻としては、真の父親を探して、その男から養育費をもらうしかなくなってしまいます。浮気の代償はとても高くつくのです。
このように、DNA鑑定をしても必ずしもいい結果が出るとは限らない(むしろ不幸な結果になる?)のですが、一度疑いを持ってしまうと真実を明らかにしたいという男性の気持ちも非常に理解できます。
■相続で揉めるケース
また、同じ親子関係を確認するDNA鑑定がよく行われるのは相続の場面です。
よくドラマなどでもありますが、ある男性が死亡し、その男性の遺産を子供たちで分割しようとしていたところ、実は腹違いの子が突然現れてきて、「私も被相続人の子供なので、遺産を分けてください。」と言ってくるようなケースです。
このような場合に、本当に死亡した男性の子かどうかを証明するためにDNA鑑定を行うことになります。
鑑定したところ、死亡した男性の子であることが判明した場合は、腹違いの子にも相続権が発生します。かつては非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1という規定がありましたが、昨年の最高裁決定でこの規定は無効とされ、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等となりましたので、腹違いの子もほかの子と同様に遺産をもらうことができます。
相続人としてははらわたが煮えくり返る思いになるでしょうが、こればかりは法律で決まっている以上どうにもなりません……。
■よいケースはあるのか
このようなケースとは異なり、逆に鑑定後ハッピーになるケースも存在します。
小さい頃に親と生き別れになり、数十年後再会したものの、本当の親子かどうかわからないという際に行うDNA鑑定です。かつて、中国残留孤児の問題がありましたが、まさにこれと同じです。この場合は、DNA鑑定をして親子関係が証明できれば、感動の再会ということになります。
このようにDNA鑑定は人を幸せにもさせるし、逆に不幸にもさせるという、いわば諸刃の剣です。今後DNA鑑定がそのような道をたどっていくのか、注目されるところです。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)