無音のカメラアプリは法律的に問題ないの?

皆さんはスマートフォンで写真撮りますか?

スマートフォンになってから写真をたくさん撮るようになった、なんて方も多いかもしれません。カメラアプリも無数にあり選ぶのも楽しいですよね。

ですが、そこで気になるのが「無音のカメラアプリ」の存在です。

「無音のカメラアプリ」の特徴は、シャッター音が鳴らないなど静かに撮影でき、動画撮影も無音できる点です。中にはメールやネットの画面を表示したまま、無音で撮影できるというアプリまであるといいます。

アプリの説明を見ると「静かな図書館で」「子供を起こさない」「授業の録画に」などと書かれていますが、実際のところ「盗撮用」と思われてもおかしくない機能が備わっているアプリもあります。

このように犯罪を助長する可能性が高いアプリを作った人、アプリを許可して配信している会社、インストールした個人などに対して、何かしらの問題は発生しないのでしょうか。考えてみます。

スマホ

■無音カメラは規制できるのか

無音カメラの問題は、ひとえに盗撮に使われやすい、ということに尽きます。よくあるのは、駅のエレベーター等で、若い女性のスカートの中を隠し撮りをしたということで、各地方自治体の迷惑防止条例違反で検挙される例があります。無音アプリなどで、このようなことをする輩が多くいます。

では、盗撮目的で無音アプリを入れる行為を法律で規制することができるでしょうか?

刑法上は、予備罪というものがありますが、基本的には法律に予備罪を処罰する規定がある場合にだけ、予備罪の適用があることになっています。そうでないと、悪しき意思を持っただけで処罰されかねませんし、子供の寝顔をとるためにシャッター音を消すアプリを入れたにすぎない場合にも処罰されかねないからです。

迷惑防止条例には、予備罪の処罰規定がありませんし、犯罪意思を持って行われたかどうかの線引きがとても難しいですので、刑事法で規制するのは難しいでしょう。

Googleグラスなどでもウィンクしただけで写真撮影できてしまうことで、被写体の肖像権侵害が発生する問題が指摘されていたりしますが、無音アプリでも同じ問題が生じます。しかし、これも事後的に肖像権侵害による損害賠償請求等の法的措置を執ることはできても、事前に法律で規制をするのは難しいでしょう。

こういう問題は、電子カメラの業界内で、無音にできない仕様にするなどの自主規制をし、電子カメラは無音にできないという国民意識を安定させた上で、立法化に踏み切る等の順序を経ていかないと解決するのは難しいのではないかと思います。

 

*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)

小野智彦
小野 智彦 おのともひこ

大本総合法律事務所

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