街路樹の枝が落下で「重傷」誰が責任取るの?

神奈川県川崎市で街路樹の枝が折れて落下し、女の子の頭に直撃して重傷というニュースが報じられました。

警察は業務上過失傷害の疑いもあるとみて街路樹の管理者から事情を聴く方針としていますが、この場合、管理者が責任を負うことになるのでしょうか。

樹木の枝はたとえ管理をしていたとしても折れる事はあるように思います。それでも管理者が責任を負う事になるのか、考えてみたいと思います。

街路樹

まず、そもそも街路樹とはなんなのでしょうか?

街路樹とは、「道路上の並木」のことであり、道路法第2条によって、「道路の付属物」と位置づけられています。ですから、街路樹の管理は、道路管理者が行うこととなります。つまり、国道、都道府県道、市町村道上の街路樹は、それぞれ、国、都道府県、市町村が管理することとなります(実際には、業務委託を受けた業者が管理を実施します)。

川崎市で起きたような街路樹による事故が発生した場合には、その街路樹を管理していた主体が責任を負う立場となります。問題は、(1)どのような内容の責任が発生しうるのか、(2)責任を管理者に負わせるためにはどのような事情が必要なのかということです。

今回のようなケースに限らず、一般的に「事故」が発生した場合に法律上発生しうる責任は、主に2つです。1つは、刑事責任と呼ばれるもの、もう1つは、民事責任と呼ばれるものです。なお、事故を起こした人が、会社で懲戒処分を受けること、代表取締役を辞任することは、「社会的責任」と呼ばれるもので、刑事責任や民事責任とは性質が異なるものです。

■刑事責任とは

まず、刑事責任とは、事故を起こした人に対して、国が「刑事罰」を与えるものです。例えば、刑務所で服役しなければならなくなる懲役刑や罰金刑を科される場合を指します。

川崎市の事件で、警察は管理責任者に対して「業務上過失傷害」の適用を念頭に置いて捜査しているようです。これは、道路の管理主体たる国や自治体所属の担当管理責任者に対して、「業務上過失傷害罪」を適用して刑事罰を科すことができないか検討されているということです。

「業務上過失傷害罪」は刑法第211条に規定があります。川崎市の事故に犯罪に適用されると、担当管理責任者は、5年以下の懲役刑又は100万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。ただ、業務上過失傷害罪に該当し刑事罰が科されるためには、その担当管理責任者が「業務上必要な注意を怠り」、かつ、その不注意によって被害者の方が傷害を負ったという「不注意と傷害の因果関係」が必要となります。

逆にいえば、(1)担当管理責任者が枝が落ちないよう業務上必要な注意を払っていた場合、あるいは(2)不注意はあったけれど、それと被害者の方が傷害を負った

ことに原因と結果の関係が認められない場合には、担当管理責任者は刑事罰が科されません。

■民事責任とは

一方、民事責任とは、被害者が負った損害を賠償させるものです。例えば、治療費、傷害のために仕事を休んで収入を得られなかった場合の休業損害などの財産的損害や精神的に被った苦痛に対する慰謝料が賠償の対象となります。

今回の件で、被害者の方に対して、民事責任を負いうるのは、道路の管理主体そのものとなります。管理責任者個人ではなく、道路の管理権を有する国や自治体となるのです。

どうして、担当管理責任者個人は被害者の方に責任を負わないのでしょうか。

■個人は責任を負わないの?

今回のケースでは民事責任について国家賠償法第2条1項を適用して追及することが考えられます。この法律は、国や自治体の職員が第三者に発生させた損害や国や自治体の管理する営造物によって第三者に損害が発生した場合には、その国や自治体に責任を一元化させるものなのです。

国家賠償法第2条1項によれば、「道路や河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害が生じたとき」は自治体が損害賠償の責任を負うと定められています。

街路樹は先ほどもお話ししたように「道路の付属物」に当たりますので、「道路」に含めて考えられることとなります。そして、「瑕疵(かし)」とは、最高裁の判例によれば「通常有すべき安全性を欠いていること」という意味になります。川崎市の事故では、問題の街路樹の枝が、事故以前から折れやすく落下しやすい状態になっていた場合には、「瑕疵」に該当する可能性があります。

先ほどお話しした刑事罰と異なるのは、国家賠償法第2条1項が適用されて国や自治体に賠償責任が認められるにあたって、「瑕疵」があったことについて担当管理責任者の不注意が必要とされていないということです。十分に注意を払っていたケースでも「瑕疵」があったといえる場合には、その瑕疵と被害者が傷害を負ったことについて因果関係が認められれば、賠償責任が発生するのです。

国や自治体が管理する道路や河川で事故が発生した場合、担当管理者個人に刑事罰を科すことよりも、国や自治体に損害賠償責任を負わせることの方が一般的にハードルが低いといえるでしょう。

あるものの(例えばビルや一般家屋などの建物)の管理者が一個人や会社などの民間団体などの場合には、ここまで広く民事責任が認められるわけではありませんが、それでもやはり、民事責任は発生するけれど刑事責任までは問えないということが多々あります。

一口に「責任を取る」「責任を課す」といっても、どのような責任を追及できるかは、ケースによって異なるのです。

*参考:20kgの枝が折れて落下 頭部直撃で6歳女児が重傷

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寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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