近隣住民の騒音問題にどう対処すべきか?効果的な解決方法とは

「引っ越したら隣人がうるさかった」「上の階の子供が朝から晩まで走り回っている」など騒音問題はよく耳にする身近なトラブルです。

しかし、どう対処するのが正しいのか分からないという声も多くあります。

そこで、今回は弁護士目線で効果的な解決方法を提案したいと思います。

マンション

■近隣トラブルの特徴

近隣トラブルの特徴として、法的判断による解決が難しい、精神的ストレスが大きいということが挙げられます。

すなわち、まず、ご近所同士の紛争は、その居住環境から、今後もある程度のつきあいを続けざるを得ないことが多く、裁判所による法的判断により一方が勝訴判決を得たとしても問題の本質的な解決とはならないことが多いといえます。

さらに、近隣トラブルは、仕事の悩み等とは異なり、自分が生活している中で抱えるトラブルであるため、精神的ストレスが大きいという特徴も有しています。

 

■近隣トラブルの対処法

近隣トラブルに対しては、今後もつきあいが続くということを念頭において対処すべきです。

このような観点からは、まず、話し合いで解決を図るのが効果的です。その際、法律、条例等の何らかの客観的な根拠をもって話し合いに臨むと説得力が増すでしょう。

次に、話し合いで決着がつかない場合も、いきなり裁判を起こすのではなく、調停(裁判所という場所を借りた話し合い)や、あっせん・仲裁(私人である第三者を判断者として、その者に判断を委ねる解決方法)など、裁判よりも穏やかな紛争解決手段が望ましいでしょう。

なお、近隣トラブルの相談先として、法的なアドバイスや話し合いの場を提供している各都道府県の弁護士会や各自治体の法律相談、仲裁・あっせんセンターなどの各種の専門機関がありますので、それらの機関を積極的に利用することもおすすめです。

 

■近隣トラブルの具体例とその対処法

(1)隣人のピアノ等の大音量に困っている場合

このような場合は、まず、騒音主と協議をすべきでしょう。生活騒音は、騒音と感じる人と感じない人の差が大きいので、騒音主に騒音発生の事実を認識してもらうことが重要です。その上で、騒音主と騒音防止対策(例えば、防音壁の設置など)について話し合いましょう。

では、協議ができなかった場合、法的にはどのような解決ができるでしょうか。

個人宅のピアノ等の音のような生活騒音については騒音規制法の規制対象外ですが、地方公共団体が条例により規制基準を定めている場合があります。例えば、東京都では、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」により、日常生活における騒音の基準を地域、時間帯毎に定められています。この条例では、規制に違反して周辺の生活環境に支障を及ぼしている者に対する知事からの騒音発生行為停止・騒音防止措置の勧告や命令の制度のほか、命令違反者に対する1年以下の懲役または50万円以下の罰金も定められています。

したがって、このようなトラブルの際は、地方公共団体の担当窓口に相談し、規制違反があれば、地方公共団体から騒音主に注意をしてもらうとよいでしょう。

さらに、地方公共団体からの注意の後も騒音が収まらないときは、条例に基づいて知事から騒音防止の措置をとるよう勧告や命令を出してもらうよう促すとよいでしょう。

加えて、騒音の程度が、社会生活を行う上で受忍すべき限度を超える場合には、自ら裁判所に訴訟を起こして騒音の差止や慰謝料を請求することも考えられます。

(2)マンション上階の騒音で困っている場合

近年、絨毯や畳敷きであった床をフローリングに張り替える居住者が増えるとともに、階下への騒音問題も深刻化しています。

これに対しては、「1」管理組合による対応、「2」下階住人個人による対応が考えられます。

まず、「1」管理組合による対応としては、管理規約違反に基づく対応、区分所有法に基づく対応が考えられます。

管理規約には、フローリングへの改修工事について、工事の仕様や材質などの条件が付されていたり、事前に理事会の承認が必要となっている場合があります。このような定めがある場合には、管理組合は、上階の住人に対し、規約違反を理由として、元の絨毯への復旧工事や、その他の防音措置を求めることができる場合があります。

また、あまりにも騒音被害がひどく、マンション全体の共同生活に重大な支障を及ぼすような場合には、「共同の利益に反する行為」に該当するとして、区分所有法57条に基づき、前述のような復旧工事や防音措置を求めることができます。

次に、「2」下階住人個人による対応として、騒音が社会生活上やむを得ない限度を超えた場合には、直接、上階の住人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求や、原状回復請求などができる場合があります。

一般的に、上階の足音などの日常生活上の騒音の場合、受忍限度を超えたものとは認められにくいといえますが、絨毯張りの床をフローリング床に張り替えた事案で受忍限度を超えるものとして慰謝料請求を認めた裁判例もあります。

 

■おわりに

これまで述べてきたとおり、近隣トラブルは、まずは当事者間での話し合いによる解決を目指し、それができない場合には、公平中立的な立場にある第三者を間に入れて話し合いによる解決を目指し、それもできない場合にはじめて裁判などの法的判断による解決を考えるべきでしょう。

もっとも、今まで述べてきたことはすべてトラブルが発生した後の話です。近隣トラブルを防止するために最も大切なことは、普段から近隣住民との間でトラブルを生まない人間関係を形成しておくことなのではないでしょうか。

鈴木 翔太 すずきしょうた

弁護士法人 鈴木総合法律事務所

東京都渋谷区恵比寿1-8-6 共同ビル4階・7階

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