プーチン大統領も「熟年離婚」イザ必要な法知識とは

ロシアのプーチン大統領が夫人と正式に離婚した、と2日、大統領報道官が明らかにしました。約30年の結婚生活に終止符を打ったプーチン大統領には夫人との間に20代の娘2人がいるそうです。

いわゆる熟年離婚と言えるこのケースにおいて、弁護士の立場から、問題となりそうな「財産分与」というテーマについて法知識をお伝えしていきたいと思います。

離婚

結婚後30年も経過していると、それまでに夫婦の財産は相当程度形成されていると思いますので、離婚の際には、当該財産をどのように分けるのか(財産分与)でもめる可能性があります。

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成してきた共同財産を、離婚の際に、原則として2分の1ずつの割合で精算、分配するというものです。

この点、ある財産が夫婦の一方の名義になっていたとしても、婚姻期間中に形成された財産であれば、夫婦の共同財産であると事実上推定されます。

逆に、夫婦の一方が婚姻前にすでに持っていた財産や、婚姻中であっても夫婦生活とは無関係に取得した財産(相続など)については、夫婦で共同して形成したとはいえませんので、財産分与の対象にはなりません。

以下、財産の類型ごとに、問題となりそうな点を見ていきます。

■不動産について

自宅の不動産(土地、建物)を夫婦で所有している場合、登記上、夫婦の一方の名義になっている場合があるかと思います。

しかし、そのような場合であっても、前述のとおり、当該不動産を婚姻後に取得したという場合には、登記名義に関係なく夫婦共同財産ということになりますので、登記名義人でない配偶者は、登記名義人である配偶者に対して、その2分の1を分配するよう請求することができます。

■預貯金について

預貯金についても、不動産の場合と同様、婚姻後に取得したものであれば、名義に関係なく財産分与の対象となります。

なお、依頼者や相談者からは、相手がどこの銀行に口座を持っているのかが分からない、という相談を受けることがよくあります。

そのような場合、調停・審判になれば、調査嘱託という方法により、裁判所から銀行に回答を求めることができますが、銀行側は、個人情報保護を理由に回答には応じないこともあります。

そのため、できれば同居中から、相手の通帳がどこに保管されているのかを調査し、銀行名や支店名、口座番号を把握しておいたほうがよいでしょう。

■年金分割制度について

財産分与の一つとして「年金分割」という制度があります。

これは、夫婦の一方が婚姻期間中に加入していた厚生年金あるいは共済年金について、夫婦間の合意、または、夫婦の他方の申立てにより裁判所が定めた分割割合に応じて、夫婦の他方が将来受給することができる、というものです。

なお、国民年金や個人年金(国民年金基金等)については分割の対象とはなりませんので、この制度を利用することができるのは、夫婦の一方または双方が厚生年金あるいは共済年金に加入している夫婦ということになります。

■退職金について

退職金は、給料の後払的な性格があり、給料と同様に婚姻中に協力して形成した財産であるといえますので、財産分与の対象となります。

問題は、離婚時にはまだ退職しておらず、将来退職する際にもらうことになる退職金についても財産分与の対象となるかですが、将来退職金支給されることがほぼ確実であるといえれば、婚姻期間に応じた部分について財産分与の対象となるものと思われます。

この場合、就業規則や過去の退職金の支給実績等に基づき、離婚時に退職したと仮定した場合の退職金を計算することになります。

以上、熟年離婚において問題となりそうな財産分与というテーマについてお伝えしました。今や多くの人が経験するようになってしまった離婚、2人の良き思い出を損なってしまうことのないよう、必要な法知識を蓄えておきたいものですね。

*参考:プーチン大統領が正式離婚、報道官が発表 | ワールド | ロシア | Reuters

理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

東京都港区虎ノ門一丁目11番7号 第二文成ビル9階

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