トルコでTwitterに続きYouTubeへのアクセスが遮断されました。政府にとって都合の悪いコンテンツへのアクセスを防ぐことが狙いだそうです。
気軽にコンテンツを投稿できるこれらソーシャルメディアは、社会に対して無視できないほどの影響力を持ちますが、もっと身近な、会社でも同じことが言えそうです。
あなたがもし会社の経営者層だとして、部下のソーシャルメディア活用を法的にやめさせることはできるのでしょうか?できるとすればどんな方法があるでしょうか?検討してみたいと思います。
■表現の自由と知る権利について
表現の自由とは、個人が外部に向かってその思想や主張・意思・感情その他情報を表現する自由です。知る権利は、表現された情報を受領する権利です。表現の自由や知る権利は、憲法21条1項によって保障されています。
表現の自由や知る権利は、個人が自分の願望を実現していく上で、また、個人が国政に参加していく上で必要不可欠であるため、重要な権利です。
部下のソーシャルメディアへのアクセスを制限することは、部下の情報発信・情報取得を制限することになりますので、部下の表現の自由や知る権利を制限することになります。
■経営者側の営業の自由・懲戒権について
他方で、経営者側には、憲法22条1項により営業の自由が保障されており、従業員を雇用している場合には職場の秩序を維持するために就業規則で懲戒事由を定め、従業員を懲戒することができます(懲戒権)。
■経営者側の営業の自由・懲戒権と部下の表現の自由・知る権利の調整
そこで、部下のソーシャルメディア活用を法的に止めさせることができるかどうかは、こうした対立する権利をどのように調整するかという問題になります。
この点、従業員が政治的なデモに参加して逮捕・勾留されて欠勤し、その後勤務先の命令を無視して出勤停止・懲戒解雇となったダイハツ工業事件(最高裁昭和58年9月16日判決)が参考になりそうです。
最高裁は、こうした事案について、使用者の懲戒権の行使は、当該具体的事情の下において、それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に初めて権利の濫用として無効になると解するのが相当と述べ、具体的事情も検討し、出勤停止・懲戒解雇を有効としました。
経営者側が行う部下のソーシャルメディア活用の制限の場合ですが、部下は雇用契約によって勤務時間中使用者の指揮命令に服す義務があるわけですから、勤務時間中の使用禁止を就業規則で定めて制限することは客観的に合理的な理由があると言っていいでしょう。
しかし、勤務時間外やお昼休みにまでソーシャルメディア活用を制限することは、通常、客観的に合理的な理由がないと考えられます。
また、部下が勤務時間中にソーシャルメディアを活用していたことを理由に、いきなり解雇することはやり過ぎであり、社会通念上相当とは言えないでしょう。ソーシャルメディア活用程度であれば、最初は注意することから始めるべきです。
■結論
そこで、結論ですが、部下のソーシャルメディア活用を就業規則で懲戒事由と定めて制限することはできる、しかし、規制のしすぎや処分の厳しすぎは懲戒権の濫用にあたり許されないといったところです。