楽天社員の元値つり上げ「指示」本当ならどんな罪?

先日、楽天の社員が「楽天市場」に出店している店舗に、「値をつり上げて割り引きしたように見せかけなさい」という不当な二重価格表示を指示していたのではないか、それが景品表示法違反に当たる可能性があるという記事を見ました。

そこで、今回は、景品表示法がどういった法律なのか、不当な二重価格表示とはどういったものか、不当な二重価格表示の疑いがある場合どういった処分・処罰を受ける可能性があるのかについて、解説してみたいと思います。

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■景品表示法の目的について

景品表示法(正式には「不当景品類及び不当表示防止法」と言います)は、事業者が不当な景品や不当な表示によって顧客を誘い込むのを防止して一般消費者の利益を守ることを目的とする法律です(同法1条)。

事業者は、憲法上「営業の自由」(同法22条1項)を保障されており、商品やサービスを消費者に売るために、景品を付けたり、商品・サービスの質が優良であると売り込んだり、商品・サービスの価格・条件が同業者よりも有利であると売り込んだりすることもできます。

しかし、「営業の自由」といっても、無制限に認められるわけではありません。

消費者の利益を害したり、公正であるべき競争市場を荒らすような行為は、「公共の福祉」(憲法22条1項)に反しますので規制されます。

過大な景品類で商品・サービスを消費者に買わせようとする行為、実際の商品・サービスよりも著しく優良であると表示する行為(景品表示法4条1項1号の優良誤認表示)、同業他社と同じような価格・条件であるのに同業他社から買うよりも著しく有利であると表示するような行為(同項2号の有利誤認表示)は、消費者の利益を害したり、公正であるべき競争市場が荒らされてしまうことから規制する必要があります。

そこで、景品表示法は、消費者の利益を守るため、公正であるべき競争市場を守るため、不当な景品を付けたり、不当な表示をすることに対して規制しているわけです(同法3条、4条)。

■「不当な二重価格表示」とは

「不当な二重価格表示」とは、本来の価格より安いとか、同業他社の価格より安いとか、あなただから安い等々と言いながら、実際の販売価格がそれほど安くなっていない場合の販売価格の表示です。

不当な二重価格表示は、消費者に有利であると誤認させる表示ですので、「有利誤認表示」(景品表示法4条1項2号)に当たり禁止されます。

今回、「楽天市場」に出店していた店舗に元値をつり上げて割引したように見せかける行為があったとの疑いが出ているわけですが、これが事実であれば、実際の販売価格は全然安くなっていないわけであって、一般消費者が商品の販売価格について、本来の価格よりも著しく有利であると誤認するおそれもありますので、不当な二重価格表示であり「有利誤認表示」に当たると考えられます。

■不当な二重価格表示をした場合どうなるかについて

不当な二重価格表示は景品表示法で禁止されるわけですが、違反した場合、いきなり刑事罰の対象となるわけではありません。

景品表示法違反の不当な二重価格表示をした場合、まず、消費者庁から、「措置命令」といって、不当な景品類の提供や不当な表示を止めなさいとか、再発防止策を実施しなさいとか、今後同じようなことは止めなさいとか、命令されます(景品表示法6条)。

刑事罰の対象となるのは、この措置命令に違反した場合です。

景品表示法は、措置命令に違反した場合、「2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処する」としています(同法15条)。

「みんなやっている」からといって許されるわけではありません。

*参考:楽天社員、元値つり上げ割引装い指示 「みんなやってます」

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

東京都千代田区霞が関3‐3‐1 尚友会館4階

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