佐村河内氏によるものとされていた作曲が実はゴーストライターが関わっていたという事実が世間を賑わしています。
その新垣隆氏による「今まで特に、耳が聞こえないということを感じたことは1度もありません」という発言はテレビで度々放映され多くの人の目に止まる衝撃の告白となりました。
その一方佐村河内氏は聴覚障害2級を取得しており、もし耳が健全に聞こえているとすれば嘘をついて障害者手帳を取得したことになり、法律的に問題がありそうです。
障害者認定制度の背景と、偽って取得した場合の罰則などについて弁護士の私が解説していきたいと思います。
聴覚障害2級というのは聴覚障害の中でも最も重い障害の部類に該当するそうです。今何かと話題になっている佐村河内氏の聴力についてはさまざまな意見が飛び交っていますが、正確な事実が判明しておりませんので、今回はあくまでも「もし佐村河内氏の聴力に障害がなかったら」という仮定での話とさせていただきます。
■詐欺罪に該当はほぼ間違いない
まず、聴力がないにもかかわらずあると偽って障害者手帳を入手した点については詐欺罪に該当することはほぼ間違いないと思います。また、それに伴って障害者手当等の金銭を受給した場合も同様です。
詐欺罪の罰則は10年以下の懲役となっています。今回は社会的に反響の大きな事件でもありますので、場合によっては実刑の判決が出る可能性もあるでしょう。
問題は、佐村河内氏に聴覚障害があったためにCD、DVD、書籍を買った、コンサートに行った、などの代金をだまし取った点について詐欺罪が成立するかという点です。
■作品への代金をだましとったといえるか
皮肉なもので、今回の騒動によって逆に佐村河内氏のCDの売り上げが激増しているようですが、その点は措くとして、確かに、聴覚障害があるにもかかわらず素晴らしい曲を作ったとなると、その事実に感銘を受け、CDやDVDを買ったりコンサートに行ったりされた方は大勢いらっしゃるでしょう。
そんな方からすれば、今回のゴーストライター、聴覚障害騒動には非常に憤りを感じ、返金してもらいたい、佐村河内氏に罰を与えてほしいという考えに至るのも無理はありません。私はCD等は買っておりませんが、私だってもし購入していたら同じような気持ちになるでしょう。
もっとも、曲自体は決して粗悪なものではないようで、フィギュアスケートの高橋大輔選手が佐村河内氏(実際には新垣氏かもしれませんが)の曲を用いたことからもわかるように、佐村河内氏の曲の完成度自体はかなり素晴らしいものであるようです。
そうであるとすると、ゴーストライターや聴覚障害云々の話は別として、曲自体はCDやDVDの対価に見合った作品であると評価できるでしょう。このような状況では、騙して粗悪な物を売りつけたというわけではないため、現実問題として詐欺罪を適用するのはかなり難しいのではないかと思われます。
■とはいえ障害偽装は絶対NG
ただ、刑事上処罰を受けないからといって、ゴーストライターや聴覚障害偽装をやっていいはずはありません。
もしゴーストライターや聴覚障害偽装が事実であるのであれば、あるいは事実でないとしても、佐村河内氏は早急に記者会見を開き、いままで支持してくださったファンの方のために、今回の騒動の真相を自らの言葉で述べるべきではないでしょうか。
12日未明に佐村河内氏本人が謝罪文を発表し、「3年前くらいから、耳元ではっきりゆっくり話してもらうと、言葉が聞き取れる時もあるまでに回復していました」と述べ、また、専門家による耳の検査を受けた上で聴覚障害者2級でないと判定された場合は「手帳は必ずお返しいたします」とも述べているそうで、真実の究明が待たれる状況となっています。